事業を営む上で必ず発生する経費には「変動費」と「固定費」の2種類が存在します。 正しく会計処理を行ったり経費削減を実現したりするためには、変動費と固定費をしっかりと区別することが肝心です。
経費の中でも人件費は特に大きな割合を占めるため、
「どのように管理すべきかわからない」
「削減したいが具体的な方法がわからない」
といった悩みに直面することも少なくありません。
本記事では、人件費を変動費化するという手法に着目し、そのメリットや具体的な方法などについて詳しく解説します。
企業のコスト管理において、固定費と変動費の区別は重要なポイントです。特に人件費がどちらに分類されるのかは、経営判断やコスト削減の戦略を考える上で欠かせません。
人件費は、従業員の給料や福利厚生費、社会保険料など、労働力にかかる費用全般を指しますが、固定費と変動費のどちらに分類されるかは、視点によって変わることがあります。
まずは固定費と変動費の違いを理解しつつ、人件費がどのように扱われるかを詳しく見ていきましょう。
固定費とは、企業の活動量(生産量や売上など)に関係なく、毎月一定の金額が発生する費用のことです。
毎月の支払いがほぼ一定のためコストの予測がしやすい一方で、売上が落ちても減らないため、経営が悪化すると大きな負担になることもあります。
人件費に関しては、正社員の基本給や管理職の固定給、年俸制の社員の報酬などは固定費として分類されることが一般的です。これらの費用は業務量や成果に関わらず毎月支払われるため、固定費としての性質を持ちます。
<代表的な固定費の例>
人件費 | 従業員に毎月支払われる給与や社会保険料など |
家賃 | 事務所や店舗の賃貸料など、使用量に関わらず固定で支払う費用 |
減価償却費 | 設備や建物などの長期的な資産の価値を計画的に費用化するもの |
光熱費の基本料金 | 使わなくても発生する電気やガスの基本料金部分 |
変動費とは、企業の活動量(生産量や売上など)に応じて増減する費用のことです。活動量が増えれば費用も増え、減れば費用も減少するため、コスト管理がしやすい特徴があります。
人件費に関しては、アルバイトやパートタイムスタッフの給与、残業手当や業績連動のインセンティブなどは変動費として扱われます。これらは勤務時間や業績によって変動するため、売上の変化に応じてコストの増減が可能です。
<代表的な変動費の例>
原材料 | 商品やサービスを提供するために直接必要な材料の費用 |
外注費 | 生産量や業務量に応じて外部に依頼する際の費用 |
販売手数料 | 売上に連動して発生する費用(例:売上に応じたカード決済手数料など) |
パートやアルバイトの給与 | 業務量に合わせてシフトを調整することで、発生する人件費を変動させることが可能 |
企業にとって、人件費は大きな負担となり得る固定費の一部ですが、ビジネスの状況や環境の変化に柔軟に対応するためには、この人件費を変動費化することが効果的です。
人件費を固定費から変動費に変えることで、コスト管理の柔軟性が向上し、経営の安定性を高めることができます。ここでは具体的な方法として、以下の3つについて解説します。
正社員の給与形態の見直し
フロー型社員の活用
アウトソーシングの活用
正社員の給与形態を見直すことで、固定費である人件費を変動費化する方法があります。
具体的には、固定給の割合を減らし、成果報酬や歩合制の導入を行うことが考えられます。これにより売上や業績に応じた給与支払いが可能となり、人件費を変動費に近づけることが可能です。
例えば、営業職など、個々の成果が明確に測定できる職種では、固定給とインセンティブを組み合わせた給与体系を導入することが効果的です。
成果や貢献度に応じて報酬を変動させる仕組みを整えることで、社員のモチベーションアップが期待できます。また企業側も売上に連動した人件費の支払いが実現し、コスト管理の最適化につながります。
フロー型社員とは、パートタイムスタッフ、派遣労働者、アルバイト、契約社員などの流動的な労働者を指します。正社員とは異なり、業務が集中する時期に必要な人材を確保し、業務が落ち着いた際には契約を終了することができる点が特徴です。
フロー型社員を積極的に活用することで、固定的な人件費を抑えつつ、必要なときに必要なリソースを確保するという柔軟な経営が実現できます。特に、繁忙期やプロジェクトの増減が激しい業界においては、このフロー型社員の導入は大きなメリットをもたらすでしょう。
アウトソーシングとは、業務の一部を外部の専門業者に委託することで、人件費を削減しつつ業務効率を向上させる手法です。
アウトソーシングの利点は、必要な業務だけを委託できるため、業務量に応じてコストを調整できる点です。例えば、繁忙期のみ業務を委託し、閑散期には契約を縮小することで、無駄な固定費を削減できます。加えて、外部の専門知識や技術を活用することで、自社では対応が難しい業務も効率的に進められるようになるでしょう。
また、アウトソーシングを活用することで、自社のリソースをコア業務に集中させることも可能です。業務効率を向上させるだけでなく、品質の向上や新たな企業価値の創出にもつながり、固定費の圧縮と同時に競争力の強化も期待できます。
人件費を固定費から変動費に変えることには、主に3つのメリットがあります。
コスト削減につながる
生産性が向上する
リスクに強い組織をめざせる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
人件費を固定費から変動費に変える大きなメリットの一つは、コスト削減です。
固定費としての人件費は、売上が低迷している時期でも支払いが続くため、企業の財務に大きなプレッシャーを与えます。しかし、人件費を変動費化することで、業績や業務量に応じて調整できるようになるため、必要以上のコストの発生を防ぐことが期待できます。
例えば、成果報酬型の給与体系を導入することで、業績が上がった際には報酬を増やし、逆に業績が低迷している場合には人件費を抑えることが可能です。
また、プロジェクト単位での採用やアウトソーシングの活用により、必要なときに必要な分だけ人件費が発生するようにすることも、コスト削減に直結するでしょう。
人件費を変動費化することで、業務の生産性向上も期待できます。
例えば、業績に直結するインセンティブや報酬制度を導入することで、社員のモチベーションアップにつながります。自分の成果が報酬に反映される仕組みは、社員の働きがいを高め、ひいては社内全体の業務効率化をもたらします。結果として、企業としての生産性が高まり、競争力の強化にも寄与するでしょう。
また、アウトソーシングによる業務の外部委託は、専門家による効率的な作業が期待できるため、品質向上と生産性の向上を同時に実現可能です。
人件費を変動費化することは、経済環境や市場の変動に対する企業の適応能力を向上させる上でも非常に役立ちます。
固定費の割合が高い企業は、不況や業績の低迷時に大きなリスクを抱えることになりますが、変動費の割合を増やすことで、経済環境の変動に対する耐性が高まります。
業績が好調な場合は人員を増やして生産力を強化し、逆に業績が悪化した場合には迅速に人件費を見直すことができるため、企業のリスク対応力が格段に向上するでしょう。
リスクに強い組織は、経営の安定性を確保しつつ、新たなビジネスチャンスにも迅速に対応できるため、持続可能な成長をめざす企業にとって重要な戦略と言えます。
人件費を固定費から変動費に変えることは、多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも伴います。
管理が煩雑になりやすい
長期的に同じ人材を確保しにくい
チームワークや社内文化が低下する恐れがある
人件費を変動費にシフトする際には、これらのデメリットを十分に考慮しましょう。
人件費を変動費化することで、企業のコスト管理が柔軟になる反面、管理業務が煩雑になりやすいというデメリットがあります。
特に、成果報酬型の給与制度やフロー型社員の活用、アウトソーシングを取り入れる場合、それぞれの契約形態や報酬の計算が異なるため、管理部門の負担が増加することが懸念されます。
例えば、成果に応じた報酬制度を導入すると、業績評価の基準設定や評価過程の透明性を保つ必要があり、それに伴う運用ルールの整備が不可欠です。また、フロー型社員やアウトソーシングの場合は、契約期間や費用、業務内容の管理が複雑化し、細かな調整やコミュニケーションが必要となります。
このような管理業務の増加は、管理部門のリソースを圧迫し、場合によっては逆にコストを増大させるリスクも考えられるでしょう。
人件費を変動費化することで、短期間の業務ニーズには対応しやすくなりますが、長期的に同じ人材を確保することが難しくなるデメリットがあります。
フロー型社員やアウトソーシングの活用により、必要なときだけ人材を確保できる一方で、プロジェクト終了時には契約も終了するため、同じスキルや経験を持つ人材を継続的に確保することが困難です。
このような状況では、長期的な視点での人材育成や戦略的な組織作りが進みにくくなる懸念があります。
人件費を変動費に変えることにより、チームワークや社内文化が低下するリスクもあります。
フロー型社員やアウトソーシングの導入により、同じメンバーで仕事をする機会が減り、従業員同士の連携が弱くなることがあります。また、契約社員や外注先の人材は、正社員とは雇用形態・条件が異なるため企業文化や価値観の共有が進まないことも少なくありません。
特に、プロジェクト単位での採用が多い場合、チームメンバーが頻繁に入れ替わるため、チームの一体感が醸成されにくく、コミュニケーションの質が低下する恐れがあります。
このような環境では、社員のエンゲージメントが低下し、結果として離職率の増加や生産性の低下を招くことにもなりかねません。企業が持続的に成長するためには、単なるコスト管理の効率化だけでなく、チームワークや社内文化の維持や強化にも注力することが重要です。
人件費を固定費から変動費に変えることは、すべての企業にとって最適な戦略とは言えませんが、特定の業界や企業の状況によっては非常に効果的な手段となります。
ここでは、人件費の変動費化による恩恵が特に大きい以下の企業について解説します。
変動の激しい業界やスタートアップ
プロジェクトベースで仕事をする企業
コスト削減を最優先する企業
市場の変動が激しい業界やスタートアップ企業においては、人件費を固定費から変動費に変えることは特に効果的です。こうした企業は、事業の成長や収益の安定性が確保されるまでに時間がかかることが多く、固定費の割合が高いと経営に大きなプレッシャーがかかります。人件費を変動費化することで、経営状況に応じてコストを調整できるため、リスクを軽減した柔軟な経営が実現できるでしょう。
スタートアップ企業は、新しいビジネスモデルや製品開発に取り組むことが多く、急激な需要の変化や市場の競争激化に対応しなければなりません。正社員の雇用を最低限に抑え、アウトソーシングや業務委託を活用することで、リスクを分散し、コストを変動費としてコントロールすることが可能です。
また、変動の激しい業界では、市場のニーズに合わせて迅速に人員を増減する必要があります。例えば、IT業界やクリエイティブ業界などでは短期間でのプロジェクトが多く、需要に応じてリソースを調整するため、変動費化が経営戦略の一環として有効となるでしょう。
プロジェクトベースで業務を行う企業も、人件費の変動費化が適しています。
建設業や広告業、IT開発など、プロジェクト単位で仕事を進める企業では、各プロジェクトの規模や期間によって必要な人材が大きく異なります。プロジェクトごとにフロー型社員やアウトソーシングを活用することで、プロジェクトに必要な人件費を調整しやすくなります。
プロジェクトベースの企業は、繁忙期と閑散期の差が大きいことが多く、人材の固定費を抱え込むとコスト負担が大きくなりがちです。変動費化により、必要なタイミングで必要なスキルを持った人材を確保でき、事業の収益性を高めることができるでしょう。
また、外部の専門家を取り入れることで、プロジェクトごとに新しい知識やスキルを導入できるメリットもあります。
コスト削減を最優先する企業にとって、人件費を変動費に変えることは非常に有効な戦略です。
業績が不安定な時期や経済の不況期には、固定費の削減が企業の存続に直結する課題となります。成果報酬型の給与や、業務委託による外注などを積極的に取り入れることで、固定的な支出を削減し、人件費の発生を必要なときだけに抑えることができます。
変動費化を進めることで、業績に応じた人件費の調整が可能になり、収益に合わせた柔軟なコスト管理が実現できるでしょう。
出典:カチアルサポート
まずは手軽に人件費の変動費化を試してみたい場合は、NTT印刷株式会社が提供するカチアルサポートがおすすめです。
カチアルサポートは、さまざまなバックオフィス業務を好きなときに好きなだけ、厳選されたスタッフに依頼できるサービスです。経理・営業事務・人事/採用・秘書・クリエイティブなど幅広い業務に対応しており、月ごとに依頼する内容を自由に組み替えることができるという特徴があります。また最短契約期間は1ヶ月であるため、短期のプロジェクト利用にも適しています。
カチアルサポートのスタッフは厳しい採用課程を通過しており、サービス提供元拠点に出社して管理者のもとで業務に従事するため、品質面やセキュリティ面でも安心できるサービスです。自由度の高さがありながらもリーズナブルな価格設定のため、「さまざまな業務で柔軟にアウトソーシングを活用したい」という企業から選ばれています。
費用 | 初回限定エントリープラン 43,000円/月(税込 47,300円) 月内利用時間12時間、契約月数3ヶ月 ライトプラン 55,000円/月(税込 60,500円) 月内利用時間12時間、契約月数3ヶ月 スタンダード1ヶ月プラン 130,000円/月(税込 143,000円) 月内利用時間30時間、契約月数1ヶ月 スタンダードプラン 118,000円/月(税込 129,800円) 月内利用時間30時間、契約月数6ヶ月 プロプラン 106,000円/月(税込116,600円) 月内利用時間30時間、契約月数12ヶ月 |
業務範囲 | 経理、営業事務、人事/採用、秘書、クリエイティブ、社内資料作成、簡易翻訳、リサーチ 等 |
特徴 | ・稼働時期、業務内容の自由な組み合わせ ・厳しい採用過程を通過した正社員のアシスタント ・マニュアル不要で業務を依頼可能 |
本記事では、人件費を固定費から変動費に変えるメリットや具体的な方法などについて解説しました。
記事のまとめは以下のとおりです。
<記事まとめ>
人件費は視点によって固定費にも変動費にもなり得るが、固定費としての人件費(正社員の給与など)は大きな経営負担となりうる
人件費を固定費から変動費に変えるには、給与形態の見直しやフロー型人材の活用、アウトソーシングの活用などの方法がある
人件費を固定費から変動費に変えることで、コスト削減や生産性向上などが期待できる
スタートアップ企業やコスト削減が急務な企業では、人件費の変動費化がおすすめ
人件費の変動費化は、短期的なコスト管理の改善だけでなく、企業の競争力を高め、持続的な成長を支える重要な施策となり得ます。企業の特性や状況に応じて、人件費の変動費化を進めていきましょう。