給与計算アウトソーシングとは、企業の給与計算業務を代行するサービスです。
「煩雑な給与計算業務をアウトソーシングしたいけど、本当に効果が得られるのだろうか?」
「給与計算のアウトソーシングに興味があるけど、業者選びに失敗したくない」
このように考える企業担当者は多いでしょう。
本記事では給与計算のアウトソーシングを導入するメリットやデメリット、適切な業者を選ぶためのポイントなどについて詳しく解説します。サービス導入を検討する際の手引きとしてご活用ください。
給与計算アウトソーシングとは、企業の給与計算業務を代行するサービスです。人手不足を解消するとともに、各業務の正確性、効率性を確保するため、規模の大小に関わらずさまざまな企業が給与計算アウトソーシングに注目しています。
<給与計算アウトソーシングの主な業務内容>
給与計算業務
仕訳データ作成業務
勤怠集計業務
賞与計算業務
退職金計算業務
年末調整業務
社会保険手続き
給与計算アウトソーシングは、規模や業界に関係なく、経営資源の効率化を図りたいと考える全ての企業にとって適した選択肢です。そんな中でも、特に以下のような状況にある企業は、アウトソーシングのメリットを最大限に享受できるでしょう。
小規模〜中規模の企業
急成長している企業
人事部門のリソースが限られている企業
コンプライアンスを確保したい企業
国際的に事業を展開している企業
従業員数が少ない小規模から中規模の企業では、給与計算プロセスが比較的単純であっても、それに付随する管理業務には工数がかかりがちです。給与計算を外部に委託することで、自社の従業員は本来の業務に集中し、企業成長のためのコア業務により多くの時間を割くことができます。
急速な成長を遂げている企業では、給与計算業務の複雑さが増す一方で、正確さを保ちながら迅速に対応する必要があります。アウトソーシングサービスを利用することで、企業規模が拡大する中でもリソースの柔軟性を確保しつつ、給与計算の精度を保つことが可能になります。
人事部門のリソースが限られている企業にとって、給与計算の業務は大きな負担となります。アウトソーシングの活用により、人事部門の負担を軽減し、従業員は他のより重要な業務に集中できます。
税法や就労法などの法令は頻繁に改正が起こります。常に最新の情報を把握して対応することは企業にとって重要な課題です。給与計算アウトソーシングの提供業者は、最新の法律や規制に精通しており、企業がコンプライアンスを維持するための手助けとなります。
複数の国で事業を運営する企業は、国によって異なる法律や税制、就労規則に対応する必要があります。各国の規制に準拠した対応を実施できる業者に依頼することで、国ごとの複雑な要件に適切に対応できます。
給与計算アウトソーシングは、労働人口の減少による人手不足や頻繁な法改正など、現代のビジネス環境において企業が直面するさまざまな課題に対応する効果的なソリューションです。
ここでは、給与計算アウトソーシングを活用するメリットを以下5つの観点から解説します。
トータルコストの削減
業務の属人化を防止できる
コア業務に集中できる
法令改正への迅速な対応ができる
繁忙期の人員調整が不要になる
給与計算アウトソーシングを活用するメリットの1つ目は、トータルコストの削減です。自社で給与計算業務を行う場合、専門的な人材の確保や継続的な教育、さらには給与計算システムの導入と保守にかかるコストが発生します。
給与計算アウトソーシングを利用することで、これらのコストを大幅に削減し、予算を他の投資や事業拡大に充てることが可能です。さらに、給与計算に伴うリスク管理やエラーの修正にかかるコストも削減できます。
給与計算業務は専門性が高いため属人化が起こりがちですが、アウトソーシングを活用することで業務の属人化を防ぐことが可能です。
特定の従業員のみが業務の詳細を理解している状態は、その従業員が休暇または退職となった際に業務の継続性が損なわれる恐れがあり、企業にとって大きなリスクです。
給与計算アウトソーシングを活用することで業務の属人化を防ぎ、業務の継続性と安定性を確保できます。
給与計算アウトソーシングは、従業員がコア業務に集中するための手助けにもなります。
給与計算は重要な管理業務であるものの、直接的に収益を生み出すわけではないノンコア業務です。ノンコア業務に時間と労力を割かれてしまうほど、他の戦略的な業務やクリエイティブ作業に取り組む時間がなくなってしまいます。
ノンコア業務を外部に委託することで、人的リソースを利益に直結するコア業務に集中させることができ、事業成長の加速が期待できます。
給与計算には、税法や社会保険に関する法令の遵守が求められ、これらの法令は頻繁に改正されます。自社で改正に対応するためには、担当者が常に最新情報を把握し専門的な知識を向上させなければならず、前述の属人化にも繋がりやすくなります。
給与計算アウトソーシングサービスを提供する会社は最新の法令にもとづいて業務を行うため、法令違反による罰金や社会的信用の損失を防ぎつつ、リーガルコンプライアンスを維持できます。
給与計算業務は、月末や年末などの繁忙期に業務量が大幅に増加する傾向にあります。自社で全ての業務を処理する場合、繁忙期に対応するための策を講じる必要があります。
しかし、専門的な知識が必要かつ個人情報を扱う業務のため、一時的に人員を補充するのは容易ではありません。
給与計算をアウトソーシングすることで、繁忙期における人員調整の手間を省き、全社的な業務効率の向上に寄与します。
給与計算アウトソーシングには多くのメリットがある一方で、注意すべきいくつかのデメリットも存在します。給与計算アウトソーシングのデメリットは主に以下の3つが挙げられます。
社内にノウハウを蓄積できない
急な変更への対応が困難
情報流出の可能性がある
デメリットを理解して適切に対処することは、アウトソーシングをするか否かの決断をする上で非常に重要です。それぞれ詳しく解説します。
給与計算アウトソーシングのデメリットとして、自社内で専門的なノウハウを蓄積できないことが挙げられます。外部に委託することで従業員の経験の機会が失われ、給与計算に関する深い知識や経験を持つ人材が育たない可能性があります。
将来的にアウトソーシングから離れ、内製化を試みる際には知識を一から習得しなければなりません。そのため、いずれ内製化に転換する可能性があれば、アウトソーシングする業務を一部に留めるなどの工夫が必要です。
給与計算アウトソーシングは依頼時の契約内容に沿って業務を行うため、社内での急な変更やイレギュラー対応が困難になる場合があります。
例えば、緊急で給与支払いの変更が必要になった場合や、特定の従業員に対する個別の給与計算処理が必要な場合、アウトソーシング先との連携や調整に時間がかかり、スムーズな対応ができないこともあるでしょう。このような状況を回避するためにも、急な変更が発生した際の対応方法やスピード感などを事前にすり合わせておくことが重要です。
給与計算アウトソーシングの最大の懸念点の1つが、情報流出のリスクです。給与計算には従業員の個人情報や給与に関する機密情報が含まれており、アウトソーシングの際にはこれらの情報を外部に共有することになります。
万が一情報流出が起きてしまうと、従業員の信頼を損ねるだけでなく、企業イメージや信頼性に重大な影響を与える可能性があります。
アウトソーシング先を選定する際には、セキュリティ対策について事前にしっかりと確認しておきましょう。
給与計算アウトソーシングを検討する際、依頼先には多様な選択肢があります。それぞれが独自の特徴や強みを持っており、自社のニーズや目指す目標に合わせて最適なパートナーを選ぶことが重要です。
アウトソーシング先として考えられるのは、主に以下の4つです。
アウトソーシング専門会社
社会保険労務士事務所
税理士事務所
フリーランス
それぞれが提供するサービスの範囲や専門性のレベル、コストパフォーマンスなどの要素を慎重に検討し、自社に最適なソリューションを提供できるパートナーを見つけることが、アウトソーシングの成功には不可欠です。
アウトソーシング専門会社は、給与計算を含む人事労務関連の業務を幅広くサポートする体制が整っています。大量のデータ処理能力、高度なセキュリティ対策、そして税法や社会保険に関する最新の法令変更への迅速な対応能力を備えています。
給与計算のプロが所属している、給与計算システムの構築から運用までサポートしてくれるなど、会社によって様々な特徴があり、自社に合った会社を選ぶことでより良い効果を発揮するでしょう。
また、コストパフォーマンスの観点からも、中小企業から大企業まで幅広い規模の企業に選ばれることが多いです。
社会保険労務士事務所は、社会保険や労働保険の手続き、労働法規のコンサルティング、給与計算など、労務管理に特化したサービスを提供します。
給与計算に関しては、社会保険料や時間外手当などの法令に精通しており、改正にも常にアンテナを張っているため、コンプライアンスを遵守した経営に貢献してくれます。
税理士事務所では、税務申告や経理業務のサポートに加えて給与計算にも対応しているケースがあります。給与計算と税務は密接に関連しているため、税理士による給与計算サービスは税法の観点から非常に有益です。
税理士は税法の専門家であるため、給与からの所得税や住民税の正確な計算、年末調整などを適切に実施できます。
また、税理士事務所を利用することで、税務調査などの際にも迅速に対応する体制を整えることが可能です。
近年、給与計算業務を請け負うフリーランスも増えています。フリーランスの場合、コストを抑えつつ、パーソナライズされた柔軟なサービスを受けられることが多いです。
特に小規模事業者やスタートアップ企業では、特定の期間だけ給与計算業務のサポートが必要な場合など、フリーランスに依頼することで解決できることもあるでしょう。
ただ、専門性やセキュリティレベルの高さは未知数であることが多いため、慎重に依頼する必要があります。
給与計算アウトソーシングを検討するにあたって、料金相場についても把握しておくと業者選定の際に役立ちます。
給与計算アウトソーシングの料金形態としては、主に下記3つのパターンに分けられます。
基本料金+オプション料金
対象人数による従量課金
稼働時間による従量課金
オプション料金は、月次の給与計算業務に加えて賞与計算や年末調整を依頼する場合に発生することが多いです。
以下にそれぞれの料金相場をまとめますので、参考にしてください。
基本料金 | 4万円〜6万円/月 |
オプション料金 | 5万円〜10万円/月 |
対象人数による従量課金 | 1人あたり1,000円前後/月 |
稼働時間による従量課金 | 1時間あたり1,500円〜4,000円 |
サービスによってはこれらに加えて初期(導入)費用がかかる場合もありますので、業者選定の際は料金形態について念入りに確認しましょう。
自社にとって最適な業者を選定するために、まずは給与計算アウトソーシングのメリットとデメリットを十分に理解した上で、自社のビジネスモデル、経営戦略、従業員のニーズなどにもっとも合致する業者を見つけることが重要です。
業者選びで失敗しないためには、主に以下の要素について自社の基準に照らして判断しましょう。
業務の対応範囲
専門性や正確性の高さ
柔軟性と対応スピード
コストパフォーマンス
セキュリティレベル
業者とのパートナーシップは企業運営に大きな影響を及ぼすため、将来を見据えた長期的な視点で、信頼できるパートナー選びを心がけましょう。
給与計算アウトソーシング業者を選ぶ際、まず確認すべきなのは業務の対応範囲です。
業者によっては、基本的な給与計算のみならず、年末調整や社会保険手続き、税務申告などの幅広い関連業務をカバーしている場合があります。自社のニーズに合わせて、必要なサービスを網羅的に提供できる業者を選ぶことが重要です。
また、将来的な事業拡大や変化に伴う業務範囲の変更に柔軟に対応できるかどうかも確認しておくと良いでしょう。
給与計算業務には正確性が求められることはもちろん、複雑な法令なども深く関わってきます。そのため、依頼するアウトソーシング業者の専門性の高さは非常に重要です。法令を遵守し、誤りのない給与計算を行うためには、最新の法改正情報に精通していることや専門知識を持つスタッフが在籍していることが必須条件となります。
アウトソーシング業者を選ぶ際には、これまでの実績や顧客からの評判を確認し、信頼できる業者を見極めましょう。
柔軟性と対応スピードも、給与計算アウトソーシング業者を選ぶ際の重要なポイントです。
例えば、緊急時の給与計算変更や特殊なケースへの対応など、顧客の要望に迅速かつ柔軟に対応できるかを確認しましょう。
また、給与振込や納税に関しては締切日があるため、スムーズな給与計算プロセスを保つためにはスピード感が求められます。
アウトソーシング業者の選定において、コストパフォーマンスも重要な考慮点です。サービスの質と価格のバランスを見極め、予算内で最適なサービスを提供できる業者を選ぶことが望ましいです。安さだけを追求するのではなく、支払う費用に見合った価値(サービスの質や付加価値)を提供してくれるかどうかを評価しましょう。
コストパフォーマンスを評価する際には、自社で給与計算に費やしているコストを正確に把握しておくことが必要です。
コストとサービス内容を比較検討し、長期的な視点でもっとも費用対効果の高い選択ができると良いでしょう。
給与計算業務に関わるデータには、従業員の個人情報が含まれており、その取り扱いには最高レベルのセキュリティが求められます。アウトソーシング業者を選定する際には、業者がどのようなデータセキュリティ対策を講じているかを確認し、情報流出のリスクを最小限に抑えられる業者を選ぶことが不可欠です。
具体的には、データ暗号化、アクセス管理、定期的なセキュリティチェックなど、業者のセキュリティポリシーと実施されている対策を詳細に検討しましょう。
セキュリティレベルの高さを証明する基準として、プライバシーマーク(Pマーク)や情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)などがあるため、これらに注目してみるのもおすすめです。
給与計算アウトソーシングは、サービスを提供する業者によって様々な特徴があります。
費用や業務範囲など、あらゆる角度から各業者を比較し、自社に合った業者を選びましょう。ここでは、参考として、以下5社の給与計算アウトソーシングサービスを紹介します。
カチアルサポート|NTT印刷株式会社
ジョブカン給与計算|株式会社DONUTS
freee人事労務アウトソース|フリー株式会社
ペイロール|株式会社ペイロール
給与プロ|株式会社シスプロ
カチアルサポートは、NTT印刷会社が提供するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスです。
給与計算のみならず、経理、営業事務・人事/採用・クリエイティブなどの幅広い業務を厳選されたスタッフが代行します。
NTTグループとしての信頼と実績にもとづくサービスを提供しており、品質の高さやセキュリティ体制の面でも安心です。
サービス名 | カチアルサポート |
費用 | 初回限定エントリープラン 43,000円(税抜)/月(税込47,300円) |
特徴 | 会計士や税理士などの有資格業務以外の、給与計算業務、幅広いバックオフィス業務に対応。 |
公式サイト |
クラウドERP「ジョブカン」シリーズの1つであるジョブカン給与計算は、社労士・給与計算担当者の声を基に開発された給与計算システムです。
ジョブカン勤怠管理やジョブカン経費精算といった、他のプロダクトとの連携が可能です。
サービス名 | ジョブカン給与計算 |
費用 | 有料プラン 従業員1名につき400円/月〜 |
特徴 | パートナー社労士と提携しており、システムの設定変更や検証にあたっては専門家が監修。 |
公式サイト | https://payroll.jobcan.ne.jp/ |
freee人事労務では、給与計算や年末調整、入退社手続きや身上変更といった人事労務の幅広い業務に対応しています。
freeeは人事労務ソフトも提供しているため、アウトソースした情報がクラウド上に蓄積されていき、随時確認ができます。
サービス名 | freee人事労務アウトソース |
費用 | 要問い合わせ |
特徴 | クラウドとの連携により、アウトソーシングから内製に切り替える際はスムーズな引き継ぎが行える。 |
公式サイト | https://www.freee.co.jp/hr/bpo/ |
ペイロールは、給与計算業務において特に工数がかかる、従業員からの問い合わせ対応や各種機関への届出など、人にしかできない窓口業務まで対応できるサービスです。
Webや電話オペレーションで直接従業員のサポートを行い、自社で対応すべき業務を大幅に削減します。
サービス名 | ペイロール |
費用 | 要問い合わせ |
特徴 | コールセンターをはじめとした専門のセンターを設置することで、業務処理の集中化と仕組み化を行っている。 |
公式サイト | https://service.payroll.co.jp/ |
給与PROは、専用システムで事務処理を行う給与計算アウトソーシングサービスです。給与計算業務の代行をはじめ、勤怠管理システムのクラウドサービス提案から給与明細のweb化など幅広く提案してくれます。オプションにより、賞与計算や年末調整も対応可能です。
サービス名 | 給与プロ |
費用 | 初期導入費用:55,000円~ 給与計算代行業務:27,500円〜 |
特徴 | 年末調整や経理業務まで、バックオフィス業務全体を包括して代行できる。 |
公式サイト | https://www.kyuyo-pro.com/index.html |
依頼する業務を自由に選びつつ、コストパフォーマンスを追求するのであればカチアルサポートがおすすめです。カチアルサポートでは、給与計算業務以外に、営業事務やクリエイティブなどの複数業務を自由に組み合わせることができます。
必要な時に必要なだけ依頼できる自由度の高さに加え、43,000円(税抜)/月(税込47,300円)〜というリーズナブルな価格帯も支持を集める理由です。
カチアルサポートのスタッフは100%正社員で、厳しい採用課程を通過したスタッフのみが参画するため品質の高さにも定評があります。さらに、スタッフは拠点に出社し、管理者の監督のもとで業務に従事するため、セキュリティ面でも安心して任せられます。
給与計算アウトソーシングは、業界や規模を問わず様々な企業から注目を集めています。アウトソーシングの活用により、経営資源をコア業務に集中させることが可能となり、結果として事業拡大や市場競争力の向上に寄与します。さらに、給与計算業務の専門家に委託することで、計算ミスによる従業員の不満や法令違反のリスクを最小限に抑えることも可能です。
成長を続ける企業にとって給与計算アウトソーシングは、業務効率化やコスト削減、リスク管理の観点などにおいて幅広いメリットがあり、非常に有効な手段であると言えます。
一方で、アウトソースに伴うリスクもあるので、事前準備や業者選びを適切に行うことも重要です。
給与計算アウトソーシングを効果的に活用し、企業の持続的な成長と競争力の向上を実現しましょう。