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事務業務マニュアルの作り方|具体的な作成ステップと作成のコツ

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目次

いかなる企業においても欠かせない仕事である事務業務。丁寧かつ迅速に行う必要がある業務であるがゆえ、長年いる担当者のやり方に依存してしまったり、細かいミスが出てしまったりすることもあるかと思います。そのようなときに導入したいのが「事務業務マニュアル」です。

本記事では、事務業務マニュアルの作り方や作成のコツについて解説します。ぜひ参考にしてください。

そもそも事務業務マニュアルとは

事務業務マニュアルとは、事務業務のやり方や作業を効率よく行うための手順、イレギュラー発生時の対応方法などを記した指南書です。

「業務工程」「作業の具体的な手順」「各手順の担当者」が記載されており、いかなる人が対応しても同じ結果が得られるように作業工程が細分化され、業務手順が説明されているものが一般的です。

業務マニュアル化の対象となる事務業務

事務の仕事は、業務マニュアル作成に向いている仕事のひとつといわれています。具体的な仕事例を下記表にまとめましたので、参考にしてください。

【種類別】事務職の業務内容

職種

特性

マニュアル作成に向いている業務

営業事務職

取引先とコミュニケーションをとる機会が多いため、臨機応変な対応力が求められる。

請求書・見積書・納品書の作成方法、電話での応対方法(取り次ぎ方など)など

経理事務

日次、月次単位など決められた時期に行う業務が多い。数字を取り扱うことが多いため特に正確さが求められる。

現金や預金、残高の確認・記録方法、伝票の起票方法など

人事労務事務

従業員とのコミュニケーションをとる機会が多い。人に合わせた柔軟性が求められる。

給与計算や勤怠管理のためのデータ入力方法、保険手続きの進め方など

法務事務

法律に関する重要な書類のやり取りがあるため、正確さや慎重さが求められる。

契約書の作成方法、トラブルが発生したときの対処方法など

貿易事務

輸出入には時間がかかるため、スピード感が求められる。

書類作成の方法や取引先とのルールなど

このように、毎月決まった日や特定のタイミングに繰り返し発生する業務は、マニュアル作成に向いているといえます。

事務業務マニュアル作成の事前準備

ここからは、事務業務マニュアルを作る前に準備しておきたい内容をご紹介します。事前準備をしっかりと行うことにより、スムーズに事務業務マニュアルの作成ができます。

  • 業務の全体像を把握する

  • 骨子を作る

  • 業務フローを可視化する

それぞれ解説します。

業務の全体像を把握する

まずは、マニュアルを作成する目的や、カバーする業務範囲を明確にしましょう。
マニュアル化すべき業務の洗い出しには、5Wを意識してみてください。

  • Why:なぜマニュアルを作成するのか

  • When,  Where,  What:いつ / どこで / 何に対してマニュアルを利用するのか

  • Who:誰がマニュアルを利用するのか

業務の全体像の把握や作業の洗い出しには、ある程度の時間が必要なため、一番大変なステップです。
ここで全体像を把握して、より具体的に作業を洗い出せるかどうかがマニュアルの完成度を左右すると言っても過言ではありません。時系列や優先順位を整理し、抜け漏れのないようにしましょう。

骨子を作る

業務の全体像の把握ができたら、次はマニュアルの大まかな構成である、骨子を作成します。
マニュアルを作成する際、記載すべき情報が多いために、どの項目をどこで書くのかがバラバラになりやすいです。しかし、構成を決めることによって、全体に一貫性を持たせられます。作業名や手順などの項目をどのように設定するかが、骨子を作成する上でのポイントです。
骨子ができたら、それをもとに目次を作りましょう。大項目、中項目、小項目がそれぞれ目次となります。

業務フローを可視化する

骨子が完成したら、次はマニュアルに入れ込む業務手順の細分化を行っていきます。
まずは、マニュアル化したい業務を時系列に沿って整理しましょう。次に、一つひとつの作業を細かく分解します。該当の事務業務に慣れている人からすると作業工程を簡易的に認識してしまいがちです。重要なのは初めてその業務に取り組む人がマニュアルを見たときに、何をするべきかがわかるような状態にすることです。
可能な限り作業単位を細かく分解し、何の作業をどのような目的で行っているのかがわかるように整理しましょう。

具体的な事務業務マニュアル作成ステップ

前準備が終わったら、いよいよ事務業務マニュアルの作成開始です。
事務業務マニュアルの作成ステップを4ステップに分けて、それぞれ詳しく解説していきます。

  1. 骨子に沿って作業項目を入れ込む

  2. 作業詳細を付け加える

  3. よくある質問とトラブルシューティングを追加する

  4. 関係者からのフィードバックをもらう

1.骨子に沿って作業項目を入れ込む

事前準備で用意した骨子に沿って、可視化した業務フローを入れ込んでいきます。
事前準備の際に各業務の作業を可能な限り細分化してあれば、このステップでは骨子に沿って情報を入れ込むだけなので、スムーズに作業を行えるはずです。

このステップでつまずく場合は、事前準備の段階で骨子がイメージしているマニュアルと異なっている可能性や、業務フローが可視化できていない(うまく細分化できていない)可能性が高いです。もう一度骨子作成や業務フロー可視化のステップに戻り、見直してみましょう。

2.作業詳細を付け加える

ステップ1で各項目の情報を埋めたら、さらにその項目や作業ごとに、より詳細な説明を記載していきます。

このステップでは、具体的な作業手順や業務の注意点なども併せて記載していきます。どのような目的でその作業を行うのかを明確にしましょう。

また、文章が長くなる場合は箇条書きにしたり、画像を用いたりと、読み手が理解できる文章であることが何よりも大切です。専門用語が使われている場合は補足するなど、業務の知識を持っていない人にとって優しいマニュアル作りを心がけましょう。作り終わった後には、一度俯瞰して読み直してみることも重要です。

3.よくある質問とトラブルシューティングを追加する

詳細作業までマニュアルを作れたら、次はよくある質問やトラブルシューティングについて記載していきます。

よくある質問とは、これまで業務を誰かに教えた際に聞かれた経験がある項目や、何度かつまづいた経験のある項目です。

トラブルシューティングの項目では、作業の途中でエラーが発生した場合や、お客様からのイレギュラーな回答への返答など、まれに発生しうるトラブルの対処法や対応方針について記載します。

これらの項目を追加することにより、よくあるミスを減らすだけでなく、万が一トラブルが発生してしまった場合に落ち着いて対応できるようになるでしょう。

4.関係者からのフィードバックをもらう

ステップ3まで終えたら、事務業務マニュアルの初稿が完成です。最後の仕上げに、関係者にマニュアルを共有し、フィードバックをもらいましょう。

関係者に確認してもらえば、自分では見つけられなかった記載漏れや不明瞭な点、自分以外の関係者が経験したミスやトラブルなどの情報を教えてもらえます。

フィードバックをもらったら、その情報をもとにマニュアルを改修していきましょう。何度も他人の目を通すことで、マニュアルの完成度は一段と上がっていきます。

業務を熟知している人だけではなく、今後その業務に取り組む予定の人など、様々な知識レベルの方にフィードバックをもらうとよいでしょう。

事務業務マニュアル作成時の3つのコツ

ここまで、事務業務マニュアルを作成するための前準備と具体的なステップを説明しました。この章では、より分かりやすいマニュアルを作るためのコツを3つ紹介します。

  • わかりやすい言葉を心がける

  • 必要に応じて画像や図を活用する

  • 定期的に更新、メンテナンスを行う

では、順番に見ていきましょう。

わかりやすい言葉を心がける

事務業務マニュアルは、さまざまな知識レベルの人が見る資料です。そのため、可能な限り専門用語や分かりづらい言葉は避け、誰もがわかる表現での記載を心がけましょう。

また、読み手の気持ちに立って書くことも大切です。主語は何か、目的語は何かなど、言いたい内容が正確に伝わる文章を意識します。
業務をまったく知らない人が初めて読む文章である意識を持って、常に「この文章で伝わるか?」と読み返しながら書いていきましょう。

必要に応じて画像や図を活用する

文章だけで説明をしようとすると、どうしても分かりづらい部分が出てきます。そのような場合、画像や図を用いて説明を補足するとよいです。

例えば、画面操作を伴う作業の場合は画面のキャプチャ画像を挿入する、物を扱う作業のときは対象物の写真を入れるなどです。
作業の全体像を把握してもらうために、チャート図やフロー図などを作成して冒頭に入れることも効果的でしょう。

定期的に更新、メンテナンスを行う

事務業務マニュアルは、一度作ったら終わりではありません。

いかなる業務も、作業フローが変わったり、ルールが変わったりすることは日常茶飯事です。せっかく作ったマニュアルが使われなくなってしまう事態を避けるためにも、定期的な更新・メンテナンス作業を行う必要があります。
ルールが変わった際にマニュアルも併せて更新する、年に1度は見直し・メンテナンスを行うなど、いつ更新やメンテナンスをするのかまでマニュアル作成時に決めておきましょう。

また、更新やメンテナンスを行った後には、作成ステップ4の「関係者からフィードバックをもらう」も忘れずに行うようにしましょう。

事務業務マニュアルを作成するメリット

ここからは、事務業務マニュアルを作成するメリットについてご紹介します。メリットは以下の3点です。

  • 教育コストを削減できる

  • 属人化を防げる

  • 業務の効率化が望める

教育コストを削減できる

事務業務マニュアルを作ることで、新入社員や担当者変更の際の教育にかかる時間が短縮可能です。
基本的な業務の手順や考え方、注意点などがマニュアルを見るだけで理解できるため、教育担当が次に何を教えるべきか迷う時間がなくなるとともに、教え漏れを防ぐこともできます。また、学ぶ側にとってはいつでも見返せるマニュアルがあることで本当にわからない部分を明確化して、効率よく仕事ができます。

教育担当者と新しく該当業務を担当する人、双方の時間的コストを削減できる点は大きなメリットといえます。

属人化を防げる

事務業務マニュアルがあると属人化を防げます。属人化とは、特定の個人に仕事の知識や技術が集中し、その人がいないと業務が滞る状況です。
事務業務マニュアルを作ることで、業務の手順、責任範囲、必要な知識やスキルを文書化して共有できます。これにより、新たなメンバーがチームに加わった際や、誰かが休暇を取る場合など、他のメンバーがスムーズに業務を引き継ぎ、遂行できます。

また、事務業務マニュアルがあることで業務の標準化が進むため、作業品質のバラつき軽減にもつながるでしょう。

業務の効率化が望める

事務業務マニュアルを作ることによって、業務プロセスの見直しや効率化が望めます。
実際の業務と事務業務マニュアルを照らし合わせることで非効率な部分や無駄を発見しやすくなり、それらを改善することによって全体の作業効率を高められるためです。

さらに、事務業務マニュアルがあることで、ミスやオーバーラップする作業の減少が期待でき、その結果、時間的コストやリソースの節約にも繋がります。
業務の標準化や効率化を促進できる点も、大きなメリットのひとつといえるでしょう。

事務業務マニュアルを作成するデメリット

続いて、事務業務マニュアルを作成するデメリットについてご紹介します。考えられるデメリットは以下の3点です。

  • 柔軟な対応が難しくなる可能性がある

  • モチベーションが下がる可能性がある

  • 定期的に更新、メンテナンスが必要

メリットとデメリットを把握した上で、メリットが大きいと感じる業務に対してのみ事務業務マニュアルの作成をおすすめします。

柔軟な対応が難しくなる可能性がある

事務業務の業務マニュアルを作成するデメリットとして、「柔軟な対応が難しくなる可能性がある」という点が挙げられます。事務業務マニュアルは業務の手順や規則を標準化し、文書化することで一貫性と効率性をもたらしますが、その反面、予期せぬ状況や特殊なケースに対しての対応が困難になる場合があります。

事務業務マニュアルに厳格に従う文化が形成されると、メンバーはマニュアルに記載されていない事態に遭遇した際、自らの判断や創造的な解決策を見つけるよりも、マニュアルの指示に依存する傾向が強くなりがちです。このような環境では、個々の職員の裁量や柔軟な思考が抑制され、新しいアイデアや改善策が生まれにくくなる可能性があります。

また、業務がマニュアルに縛られすぎると、顧客や状況に応じた臨機応変な対応が難しくなることも考えられるでしょう。特に、顧客サービスを扱う事務業務の場合、マニュアルにない問題や要望に対して迅速かつ柔軟に対応することが重要ですが、マニュアルに依存しすぎるとその能力が低下する恐れがあります。

このため、事務業務マニュアルを作成する際には、マニュアルが業務のガイドラインであることを認識しつつも、個々の判断や柔軟性を奨励する文化を同時に育む必要があります。マニュアルを過度に頼りすぎず、状況に応じた適切な判断ができるよう、継続的な教育とトレーニングが必要です。

モチベーションが下がる可能性がある

事務業務マニュアルによって業務の手順を厳格に定めることで、担当者自身の裁量や創造性を発揮する余地が狭まるため、担当者のモチベーションが下がる可能性があります。

特に、創造的な問題解決や自己判断による業務改善を重視する人にとっては、事務業務マニュアルに縛られた仕事は物足りなさや制約を感じてしまう可能性が高くなります。自分の仕事が単なる「決められた手順の実行」に過ぎないと感じてしまうと、自分の仕事に対する価値や貢献度を低く評価するようになるかもしれません。

そのため、事務業務マニュアルの導入や運用に際しては、事務業務マニュアルはあくまでも仕事の品質を確保するためのサポートツールであることを伝えると良いでしょう。担当者から定期的にフィードバックを取り入れることも、モチベーション維持には大切です。

定期的に更新、メンテナンスが必要

マニュアルの定期的な更新とメンテナンスが必要になる点も、デメリットの一つとして挙げられます。
業務プロセスや使用するツール、組織のルールなどは変化することもあり、そのような場合には事務業務マニュアルも適宜更新する必要があります。

しかし、事務業務マニュアルの更新は時間と労力を要する作業です。特に大規模な組織や変化の激しい業界では、マニュアルを常に最新の状態に保つのは大きな課題となっています。

更新作業が適切に行われていないと、従業員が古い情報に基づいて作業を行うことでミスが発生するリスクが高まるため、定期的な更新は必須作業といえるでしょう。

マニュアル作成は外注できる

引用:カチアルサポート
上記メリットで紹介したように、事務業務のマニュアルを作成することによって業務の効率化が叶い、教育にかかる時間的コストの削減もできます。

しかし、「マニュアルを作ろうとしても対応できる人手がない...」「業務のノウハウを言語化してマニュアルに落とし込むのは大変...」「PowerPointの操作は苦手...」そのような場合におすすめなのが、カチアルサポートです。

カチアルサポートでは、バックオフィス業務の代行サービスを提供しています。
依頼できる業務の1つとして、マニュアル作成の代行に対応しており、その他にも経理・営業事務・人事/採用・秘書・クリエイティブなど様々な事務作業の依頼が可能です。

マニュアルの作成だけを外部に依頼するのはちょっとハードルが高いという企業様でも、その他の事務作業と一緒にアウトソーシングしてしまうことで、さらなる効率化・人手不足解消が図れます。

社内で人手が足りない中で不慣れな作業に取り組むよりも、社外にアウトソーシングしてしまった方がリーズナブルな場合もあります。

まとめ

この記事では、事務業務マニュアルの作成方法や作成ときのコツ、マニュアル作成のメリット・デメリットを紹介しました。

事務業務マニュアルを作ることにより、業務の効率化や教育などにかかる時間的コストの削減が見込める一方で、事務業務マニュアル作成には多くの労力がかかります。

どの業務をマニュアル化するのか、一度全体像をよく把握してから事務業務マニュアルの作成に取り組みましょう。

より効率化を測りたい場合は、事務代行サービスの利用を検討してみるのも一つの方法です。