人事業務は社内の人材育成や評価、採用、労務管理など様々あります。
「人手が足りず、業務が進まない」「スケジュールが厳しくて、採用人数を増やせない」といった悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。
そのようなケースにおすすめなのが人事アウトソーシング(代行)です。この記事では、人事アウトソーシングサービスの概要やメリット・デメリット、導入手順について詳しく解説します。おすすめサービスや導入事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
人事アウトソーシングとは、人事業務を外部に委託できるサービスのことです。近年は少子高齢化の影響により人手不足の企業が多く、各従業員にかかる業務負担が増加しやすい状況となっています。
一方、国は働き方改革を推進しており、残業時間が規制されるなど労働時間を延ばすことが難しいのが現状です。
人事アウトソーシングは、このような状況の打開策として注目を集めています。社内で対応できなくなった業務を外部に委託することで、従業員の業務負担軽減やコア業務への注力が叶います。
2021年4月に株式会社矢野経済研究所が行った調査によると、人事アウトソーシングを採用する企業は増加しており、市場規模が拡大していることが明らかになりました。
リーズナブルな価格設定で利用できるクラウドサービスも増加しており、人事アウトソーシング市場は今後も拡大していくものと予測されます。
参考:株式会社矢野経済研究所 人事・総務関連業務アウトソーシング市場に関する調査
人事アウトソーシングサービスで依頼できる業務は、以下の通りです。
給与計算・勤怠管理
社会保険に関する業務
採用に関する業務
人材育成
ここでは、対応業務の具体的な内容について解説します。
人事アウトソーシングに依頼できる主な業務は、従業員の出勤・退勤や欠席状況などを確認する勤怠管理業務です。出勤日数をチェックし欠勤者に連絡を入れたり、出勤状況に応じて給与計算を行ったりします。
また、所得税や社会保険料などの税額計算や、残業代、賞与などの計算も可能です。勤怠管理と給与計算は人事業務の中でも特に工数がかかるため、従業員の負担軽減を目指す際にまず依頼を検討したい業務といえます。
健康保険・雇用保険・労災保険などの申請書提出や書類管理、税額計算などの業務です。確定申告の手続きや育児・介護休業などの手続きも含まれます。
社会保険に関する業務は会計知識だけでなく税務知識も必要になるため、「自社で対応できる従業員が少ない」というケースも少なくありません。人事アウトソーシングによって専門的な知識と経験を持つ人材に委託することで、法令に則り正しく管理できます。
新卒・中途採用者の面接対応や応募書類の確認、スケジュール調整などの採用業務も対応可能です。また、求人広告の作成や採用戦略の立案なども依頼できます。採用業務では応募者や採用者と細かくやり取りをしなければならなず、業務内容も多岐に渡ります。
採用代行に特化したサービスもありますが、採用代行では、人材育成や給与計算など既存社員に関する人事業務は対応範囲外です。幅広い業務を依頼したい場合には人事アウトソーシングが向いています。
従業員の研修や教育プログラムの導入といった人材育成も、人事アウトソーシングに依頼可能です。コア業務が忙しいと、なかなか人材育成に手が回らないこともあるでしょう。人事アウトソーシングを利用すれば、研修の日程調整から会場の予約、受講者への連絡、当日の進行などもお任せできます。
人材育成業務を委託すると、第三者の視点が入るため適切なフィードバックを得られるのもメリットのひとつです。ノウハウを構築しやすくなり、人材育成の質が向上します。
人事アウトソーシングを活用するメリットは、以下の通りです。
業務の効率化が叶う
コンプライアンスを実現できる
コスト削減につながる
人手不足に対応できる
具体的な内容について解説します。
人事アウトソーシングを導入する主なメリットは、業務の効率化が叶うことです。特に勤怠管理や給与計算などのルーティンワークを外部に委託することで、重要性の高いコア業務に集中できる環境が整います。
これまで業務過多の状態で人事業務が遂行されていた場合、担当者の負担やストレスが軽減されます。モチベーションや生産性が向上するなど、健康経営としての効果も期待できるでしょう。
さらに、外部の人材が導入されることで、今までとは違う視点で人事業務が遂行されることとなります。新しい気付きや、自社にはなかったスキルを享受できるという点も大きなメリットです。
人事業務のすべてを自社で対応する場合、「未経験の従業員が多い」「会計知識しかない従業員が多い」など、人事業務に関する専門性が乏しいケースも少なくありません。
一方、人事アウトソーシングでは、一定の知識や経験を持つ人材に業務が割り振られます。専門性の高い人材が適切な方法で人事業務を遂行するため、業務の質を向上できるでしょう。
社会保険や労働基準法といった法律への対策も可能です。法律違反のリスクが軽減され、コンプライアンスを実現できます。
専門的な知識を持つ人材が効率的に業務をこなすため、自社で人員を確保する必要がなくなり、採用費・人件費の削減につながります。
また、人事アウトソーシングを担う企業から無駄を省くためのノウハウも享受できるでしょう。その結果、これまで利用していたサービスやシステム、研修などで無駄になっていた費用が明らかになれば、コスト削減が実現します。人事アウトソーシングに支払う費用は発生しますが、費用対効果は高くなるでしょう。
働き手不足といわれている昨今では、「採用者を増やしたくても対応できる人材がいない」「人事業務の担当者が退職してしまい対応できる人材がいなくなった」というケースも少なくありません。人事アウトソーシングを利用すれば、このような状況の企業でも業務の質を落とすことなく継続できます。
起業したばかりのスタートアップ企業や、従業員の高齢化が進んでいる中小企業など人手不足に課題を持つ企業に最適なサービスです。また外部の人材に業務委託をすることで、業務フローが可視化されるため、業務が属人化するリスクも軽減できます。
人事アウトソーシングを利用するデメリットは、以下の通りです。
情報漏えいリスクがある
自社のノウハウを育成しにくくなる場合も
連絡不足による人為的ミスが発生しやすくなる
具体的な内容について解説します。
人事業務では個人情報を取り扱うため、情報漏えいリスクに注意が必要です。外部と情報をやり取りする過程で、誤って情報が流出する可能性があります。万が一情報漏えいが起こった場合、企業の信頼度が低下することも考えられます。
ただし、人事アウトソーシングサービスを運営する企業では、ルールや法律に則ってリスク管理を徹底しているケースがほとんどです。知識量の少ない自社社員が業務を遂行するよりも、むしろセキュリティ体制が盤石になったというケースも多いでしょう。
人事アウトソーシングは、自社の従業員における人事業務のスキル向上や、ノウハウの蓄積をめざす企業には不向きです。特に、専門性の高い業務は一度委託すると自社での対応が難しくなる恐れがあります。
自社にノウハウが育成されなくなると、今後もアウトソーシングサービスに頼り続けなければなりません。長期的に見た際に、コストが余計にかかってしまうようになることも考えられます。
アウトソーシングを利用する際は、あらかじめある程度の業務内容を決めておくことが多く、イレギュラーな事態が発生した際に対応が遅れる可能性があります。また、連絡不足により、意思疎通が困難になれば認識のズレなどが発生し、大きな問題に発展する可能性も否定できません。
例えば、内定者への連絡において、人事アウトソーシングの担当者と自社の担当者から異なる対応があった場合、不信感を抱かれ、内定を辞退されるといったケースが考えられます。
サービスを利用する際は仕事を任せっぱなしにせず、委託先と自社の担当者で密にコミュニケーションを取ることが大切です。また、重要な業務やコミュニケーションが必要となる業務は自社社員で対応するなどして対策を立てる必要があります。
人事アウトソーシングサービスを導入する際の手順は以下の通りです。
自社課題を明らかにする
業務範囲を決定する
業務フローを作成する
委託先のサービスを選定する
まずは自社において、「何が課題になっているのか」「どの業務に人材が必要なのか」といった点を明確にしましょう。面談やアンケートを実施して、従業員ニーズを把握・分析する必要があります。
自社課題解決や目的に合ったサービスを選択することで、アウトソーシングを利用した際に「失敗した」「意味がなかった」と感じるリスクを軽減することができます。
なお、運営会社・サービスによって依頼できる業務範囲が異なるため、サービス内容をよく比較することが大切です。どのような業務を依頼するか、流れや業務フローまで具体的に決めておくとスムーズに依頼できます。
依頼内容が決まったら利用するサービスを決めて、見積もりを依頼しましょう。予算と目的に合うサービスを導入すれば、より一層費用対効果を高められます。
人事アウトソーシングを選ぶ際のポイントは、以下の通りです。
料金体系
実績や専門性
セキュリティ体制
サービス比較時にチェックしておきたい点について詳しく解説します。
人事アウトソーシングの料金体系は、主に「月額制」と「従量制」の2パターンです。
月額制:あらかじめ定められている料金を毎月支払う
従量制:利用したサービスや時間に応じて料金が変わる
月額制は、事前に費用が定められているため追加費用が発生する心配がない点にメリットがあります。一方従量制は、急な人手が必要になったときや繁忙期だけ依頼したいときなど、ピンポイントで業務を委託する際におすすめです。
ただし、イレギュラー対応などオプションサービスを追加する場合、料金が加算される可能性があります。自社のケースではどれくらいの費用がかかるかを、事前に確認しておきましょう。
人事業務では人事に関する知識だけでなく、会計や税務、法律に関する知識も必要です。採用業務においては、人材の将来性や人間性を見極める力も求められます。
そのため、質の高いサービスを提供してくれる運営会社を探しましょう。たとえ利用料金が安くても、サービスの質が低いとかえって費用がかさむこともあります。
サービスの導入実績は、「利用のしやすさ」や「顧客満足度」を図る指標のひとつです。実績数の多いサービスは、それだけ多くの企業から認められてきた証ともいえます。自社にとっても適切なサービスを提供してくれるでしょう。
情報漏洩リスクを削減するためにも、どのような管理体制にあるのかを事前に確認しておく必要があります。セキュリティ体制をチェックする際は、以下のようなチェックポイントを参考にしましょう。
【セキュリティ体制のチェック項目】
ISMS(情報セキュリティ管理システム)を認証しているか
プライバシーマークを取得しているか
ISAE3402保証報告書を取得しているか
近年はクラウド型サービスも増えており、情報漏えいリスクは高まっています。セキュリティ体制についてはホームページに記載されているケースがほとんどです。詳細が不明なときは電話やメールで問い合わせをして、しっかりと確認しておくことが重要です。
おすすめの人事アウトソーシングは以下の5つです。
人事アウトソーシングサービス(BPO)
C*HRs(シーアワーズ)
Remoba労務
BPOサービス
カチアルサポート
各サービスの特徴や料金プランについて解説します。
引用:株式会社JOE
SMBCグループ系列の企業である、株式会社JOEが運営するサービスです。給与計算・賞与計算、入退社や異動の処理、年末調整など人事に関する事務作業に対応しています。
給与計算業務では50年以上、利用者実績は39万人といった豊富な実績があるのが強みです。また、社労士との連携サービスやマイナンバー管理サービスも利用できます。セキュリティ体制が整っており、学校法人や社会福祉法人での導入実績もあるため情報漏えいが気になる企業にもおすすめです。
サービス提供企業 | 株式会社JOE |
メイン業務 | 人事、給与計算、勤怠管理、年末調整、マイナンバー管理 |
費用 | 要問い合わせ |
サイトURL |
引用:株式会社シーエーシー
C*HRs(シーアワーズ)は、株式会社シーエーシーが運営する人事アウトソーシングサービスです。大手企業での導入実績もあり、業員1,000人以上の企業に適しています。
人事給与BPOサービスでは人事業務や給与業務、福利厚生業務、就業業務などに対応可能です。業務効率化やプロセスの見直しも依頼できるため、業務の質を高めたいときや自社ノウハウを再構築したいと考えている企業にも向いています。
サービス提供企業 | 株式会社シーエーシー |
メイン業務 | 人事、給与、福利厚生、就業 |
費用 | 要問い合わせ |
サイトURL |
引用:株式会社Enigol
Remobaは株式会社Enigolが運営するサービスで、日本トレンドリサーチの調査では「クラウド活用支援アウトソーシングサービスNo.1」を獲得しています。人事・労務、給与計算、勤怠などに、幅広く対応可能です。
クラウド型システムになっており、土日や深夜の業務も依頼できます。Remobaにはほかにも「採用」「経理」「アシスタント」「チャット」といったサービスがあるため、複合的な企業課題を抱える企業に最適です。
サービス提供企業 | 株式会社Enigol |
メイン業務 | 人事・労務、給与計算、勤怠管理 |
費用 | ・6ヵ月プラン:200,000円/月 ・年間プラン:180,000円/月 ・1ヵ月プラン(トライアル):200,000円/月 |
サイトURL |
パーソルワークスデザイン株式会社は、人材派遣事業を主軸とするパーソルグループに属する企業です。グループの強みである豊富なノウハウを活かして、人事アウトソーシングサービスを展開しています。
BPOサービスでは、経費計算や経理業務、資格検定アウトソーシングなどが可能です。また、採用業務が可能なHRソリューションサービスや顧客対応が可能なヘルプデスクのサービスもあります。大手企業での導入実績も多く、トータルサポートを必要とする企業におすすめです。
サービス提供企業 | パーソルワークスデザイン株式会社 |
メイン業務 | 経費計算、経理、採用、顧客対応 |
費用 | 要問い合わせ |
サイトURL |
引用:カチアルサポート
カチアルサポートは、NTTグループであるNTT印刷株式会社が運営するサービスです。人事、採用、営業事務・経理などのバックオフィス業務に対応しています。
契約時間や業務内容を自由に決められるのが強みです。月ごとに依頼内容を変更できるため、その時々の状況に応じて有効的にサービスを活用できます。また稼働開始まで最短6営業日で利用できるのもうれしいポイントです。急な離職や休業があったときでも、すぐに欠員分のリソースを補充して人事業務を継続できます。
サービス提供企業 | NTT印刷株式会社 |
メイン業務 | 経理・営業事務・採用/人事など |
費用 | ・エントリープラン:43,000円/月 ※初回限定、月12時間、3ヵ月契約 ・ライトプラン:55,000円/月 ※月12時間、3ヵ月契約 ・スタンダードプラン:118,000円/月 ※月12時間、6ヵ月契約 ・プロプラン:106,000円/月 ※月30時間、12ヵ月契約 |
サイトURL |
人事アウトソーシングサービスの導入事例は以下の通りです。
株式会社すかいらーくホールディングス
学校法人田園調布雙葉学園
クオール株式会社
サービス挿入に成功した企業の詳細を紹介します。
株式会社すかいらーくホールディングスは、数々の人気ファミリーレストランを運営する企業です。
自社での採用プロセスで思うような結果が出なかったことから、採用業務や応募受付センターの運営などを人事アウトソーシングサービスに依頼しています。具体的な依頼内容は以下の通りです。
採用業務の委託
他社の成功事例から得たノウハウの共有
パート・アルバイトの応募受付センターを開設
従業員管理にかかるバックオフィス業務を委託
採用業務の一部をアウトソーシングすることで、コア業務に集中できるようになりました。また、スピーディーな対応が可能になったことで採用プロセスの途中離脱が半分に減少。採用人数目標も3年連続で達成するなど、さまざまなメリットが発生しています。
引用:学校法人田園調布雙葉学園
田園調布雙葉学園は、幼稚園から小学校、中学高等学校を運営する学校法人です。給与明細は現在も紙で配布しており、従業員数に対して人事担当者数が少ないことから、給与計算業務にかかる負担を軽減するためにサービスを導入しました。具体的な内容は以下の通りです。
給与計算システムの導入
状況分析と問題解決
給与明細の配布作業の依頼
分からないことや見直した方が良いことなどを運営会社と担当者に随時質問することで、自社課題の解決に至りました。利用サービスについては「イレギュラーな事態にも迅速に対応してもらえた」などと満足する声が上がっています。
より一層の業務効率化を検討する時間ができるようになったのも、大きな利点です。また、業務にかかる負担が軽減されたことで、業務の正確性も向上しています。
参考:株式会社JOE 導入事例
引用:クオール株式会社
クオール株式会社は日本全国約830店舗の調剤薬局を運営している企業です。業務量が膨大にあり残業が必要となる従業員も多かったため、人事アウトソーシングサービスを導入することとなりました。具体的な内容は以下の通りです。
長崎BPOセンターでフルBPOの導入
業務支援メンバーの派遣
人事給与システム「COMPANY」運用
現行システム・業務をそのまま引き取ってもらったことで、早急な対応が可能となりました。また、業務支援が始まってすぐに残業は半分程度になり、現在では残業が10分の1以下になったメンバーもいるようです。
コア業務に集中できるようになったため、中にはクリエイティブな業務が50%以上を占めるようになった従業員もいます。
人事アウトソーシング(代行)は、給与計算や勤怠管理、採用、人材教育などの人事業務を外部に委託するサービスです。サービスを利用すると、「コンプライアンスを実現できる」「人手不足に対応できる」「業務効率化が叶う」といった複数のメリットがあります。
ただし、人事アウトソーシングサービスは複数あるため、どのようなサービスを選択すれば良いか分からずなかなか導入に踏み切れないという企業も多いでしょう。
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