「業務が属人化している」「新入社員の教育が思うように進まない」といったお悩みをお持ちの企業担当者は多いのではないでしょうか。
これらの課題は、明確で効果的な業務マニュアルがないことが原因であることが多くあります。
本記事では、効果的なマニュアル作成のためのステップやコツ、マニュアル作成後の運用方法について詳しく解説します。
業務の効率化や品質向上を実現するためのマニュアル作成ガイドとしてご活用ください。
業務マニュアルとは、日々の業務を効率的かつ一貫性をもって行うために作成される文書で、特定の業務を遂行するために必要な手順、基準、方針などを示します。
業務マニュアルの主な目的には、業務の標準化、品質の保持、新入社員や既存社員のトレーニング、業務効率の向上などが挙げられます。
経験豊富な従業員から業務未経験者まで、誰が見ても業務全体の大まかな流れを把握でき、すぐに理解できるようにすることが業務マニュアルの重要な役割です。
業務マニュアルの作成は、多くの企業やチームにとって、効率性と生産性の向上に直結する重要なプロセスとなります。ここでは、業務マニュアルを作成することのメリットを以下3つの観点から解説します。
業務効率化やコストの削減につながる
業務の属人化が防げる
新入社員の教育や業務引き継ぎがスムーズになる
業務マニュアルは、業務プロセスを明文化して、作業の標準化を図ることで、業務の効率化を実現します。業務を可視化することで無駄な手順や工程を発見しやすくなり、結果としてコスト削減にもつながります。
また、効率的な業務プロセスを構築することにより、従業員がより重要な業務に集中できる環境を提供し、全体の生産性向上に貢献するでしょう。
業務マニュアルがない組織やチームは、限られた担当者だけが業務の手順や方法を知っている状態、いわゆる”属人化”が起こりやすい状況です。
業務マニュアルを作成することで、特定の担当者に依存することなく、誰もがマニュアルに沿って業務を遂行できるようになるため、人事異動や急な欠員が生じた場合でも業務の継続性を保つことができます。これにより、組織のリスク管理と事業の持続可能性が高まります。
新入社員の教育や業務の引き継ぎは多くの時間と労力を要するプロセスですが、ここでも業務マニュアルの活用が効果的です。
業務マニュアルによって必要な情報や手順がすでに整理されているため、教育や引き継ぎが効率的かつスムーズに行えます。業務マニュアルを活用することで、新入社員が自立して業務を担当できるまでの時間を大幅に短縮することが可能となり、結果として人材育成コストの削減にもつながります。
また、業務マニュアルによって業務が標準化され、「教える人によって業務の手順や方法が異なる」といったリスクも減らすことができるでしょう。
業務マニュアルを作成し始める前に、まずは全体の流れを把握しておきましょう。効果的な業務マニュアルを作成する流れは以下の5ステップです。
適用範囲や目的の明確化
作成スケジュールの決定
業務内容・手順の整理
構成を作成
本文の作成
各ステップの具体的な内容について解説します。
業務マニュアル作成の最初のステップは、その適用範囲や目的を明確にすることです。どの業務範囲のマニュアルを作成するか、何を目的にマニュアルを作成するかなどを検討します。この段階で、業務マニュアルに含めるべき内容や目標を特定し、全体の方向性を設定します。
次に、業務マニュアルの作成スケジュールを決定します。作業の開始時期、重要なマイルストーン、完成予定日などのスケジュールを設定することで、プロジェクトの進捗を追跡し、タイムリーに確認することができます。
業務の片手間で作成しようとするとつい後回しになりがちなため、まずは作成期限を設定してから逆算してスケジュールを立てていくことがおすすめです。
スケジュールが決定したら、マニュアルに記載する業務内容と手順を詳細に整理します。各業務に必要なステップ、関連するポリシーやガイドライン、必要なツールや資料などを明確にしていきましょう。ここでは、現場の従業員からのフィードバックを取り入れることも重要です。実際に現場で発生する業務やフローを反映させることで、マニュアルの実用性と有効性を高めることができます。
業務内容と手順が明確になったら、業務マニュアルの構成を作成します。構成とは全体の骨組みのようなもので、本の目次をイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。記載すべき項目をピックアップし、大項目→中項目→小項目の順に分類して整理していきましょう。「こんなときには」「困ったときは」など、FAQタイプのページも構成に組み込むことがおすすめです。
最後に、業務マニュアルの本文を作成します。構成に沿って、整理した情報を言語化していく作業です。その業務に初めて携わる人の視点に立って、明確で理解しやすい言葉を使用することが重要です。作成後は第三者に読んでもらうなどし、分かりにくいところや誤解を招く表現がないか確認します。
業務マニュアルを作成する際のコツには、以下のようなものが挙げられます。
5W1Hを意識する
担当者別や時系列で整理する
図やフローチャートを活用する
ミスやトラブルを想定した内容を盛り込む
より効果的な業務マニュアルになるよう、ただ作るだけではなくコツを意識して作成していきましょう。
業務マニュアルを作成する際には、下記の5W1Hを意識することがポイントです。
・Who:誰が使うか
・What:何に対して使うか
・When:いつ使うか
・Where:どこで使うか
・Why:なぜ作成するのか
・How:どのように利用するか
この5W1Hを意識することで、読者や目的、利用シーンに沿った分かりやすい業務マニュアルを作成できます。
業務マニュアル内の情報を担当者別や時系列に整理することで、業務の流れが一目でわかり、誰が何をすべきかが明確になります。特に、複数の組織やチームが関与する業務では、この整理がコミュニケーションの混乱を防ぎ、スムーズな業務の進行に繋がります。また、緊急時の対応なども時系列で整理しておくことでいざという時に効果を発揮するでしょう。
複雑な業務プロセスや手順は、テキストだけで説明するよりも、図やフローチャートを用いることで理解しやすくなります。視覚的な要素を加えることで、業務の流れや関連性、判断ポイントなどが一目で把握でき、分かりやすい業務マニュアルとなります。内容が読者に正確に伝わることで、個人ごとの解釈の違いが生まれにくくなることも大きなメリットです。
分かりやすい業務マニュアルは読む時間を短縮できるので、その分業務に集中できるでしょう。
業務マニュアルには、ミスやトラブルが発生した際の対応手順を含めることも重要です。実際の業務では予期せぬ事態が発生することがあり、迅速に対処するためのガイドラインが必要です。事前にトラブルシューティングのプロセスを定めておくことで、問題が発生した際の混乱を最小限に抑え、迅速な解決を促すことができます。
また、発生し得るミスやトラブルについて具体的な事例を記載することで、ミスが起きやすい部分の注意喚起にも繋がります。
業務マニュアルは作成して終わりではなく、その後の運用も非常に重要です。運用で行うべきことは主に以下の3つです。
保管方法・場所の決定
必要に応じて更新やメンテナンスを行う
継続的なフィードバックの取り入れ
作成した業務マニュアルがしっかりと現場で活用されるよう、適切な運用を行いましょう。
業務マニュアルを作成しても、従業員が活用しなければ意味がありません。必要な時にいつでも閲覧できるようにしておくためにも、業務マニュアルの保管方法と場所の決定は重要です。
保管方法に関しては、主に紙形式か電子形式かの2択があります。それぞれのメリット・デメリットを下記表にまとめましたので、参考にしてください。
メリット | デメリット | |
紙形式 | ・デジタル機器などの用意が不要 | ・印刷コストがかかる |
電子形式 | ・更新や差し替えの作業が簡単 | ・閲覧するための機器が必要 ・複数ページの同時参照が困難 |
どちらが適しているかは企業によりますが、保管方法や場所が決まったら従業員に周知し、活用を促しましょう。
業務マニュアルは生きたドキュメントであり、組織の変化や業務プロセスの改善に伴い、定期的な更新が必要です。新しい業務手順の導入、法規制の変更、またはフィードバックに基づく修正などが、更新の理由となります。更新する際は、更新日時、更新箇所、更新内容などの履歴を残しておくことが重要で、これによりいつどのような変更がされたかを追跡できます。
定期的なレビューをスケジュールに入れ、少なくとも年に一度は内容を見直して、現在の業務状況に合っているかを確認することがおすすめです。
業務マニュアルの運用においては、実際に利用している従業員からの継続的なフィードバックの取り入れが不可欠です。フィードバックは、マニュアルの有効性を評価し、改善点を特定するための貴重な情報源となります。フィードバックを促進するためには、従業員が意見や提案を簡単に申し出られるような仕組みづくりも必要です。
定期的な業務マニュアルの更新プロセスの中で収集したフィードバックの内容を考慮し、必要に応じて内容の改善や追加を行いましょう。
業務マニュアルを作成することが決まったら、いきなり作り始めるのではなく、まずは事前準備から取り掛かりましょう。業務マニュアルの作成をスムーズに進めるために、以下3つの事項を事前に決めておくことがおすすめです。
担当者・責任者の決定
利用するツールの検討
アウトソーシング活用の検討
これらを決めておくことで、いざ業務マニュアルを作成しようとする際に停滞したり頓挫したりすることなく進められます。
業務マニュアルの作成を始める前に、担当者や責任者を明確に決めておきましょう。担当者は、マニュアルの作成や編集、レビューを行う主体となり、責任者は、全体の進行管理や意思決定、関係者とのコミュニケーションを担当します。各メンバーの役割と責任範囲を明確にすることで、業務マニュアル作成の進行がスムーズになります。
業務マニュアルの作成にあたり、どんなツールを利用するかも事前に検討する必要があります。WordやExcelなどのOfficeソフトを使用する方法もありますが、作成や保管に手間がかかるため、近年ではITツールを活用する企業も増加傾向にあります。
マニュアルの内容や作成にあたる人員数、予算などに応じて最適なツールを選択することがポイントです。例えば、複数人でリアルタイムでの共同作業が必要な場合は、クラウドベースのドキュメント管理システムが有効です。
業務マニュアルを作成するための人員確保が困難な場合や専門家の手を借りたい場合、アウトソーシングの活用も一つの選択肢です。
アウトソーシングの利点は、社内の人件費コストを削減できることや専門的なスキルを持つプロフェッショナルによる高品質な内容を確保できることです。社内リソースの負担を軽減することで、従業員はコア業務に集中することができます。
また、アウトソーシングで客観的な視点を取り入れることにより、企業の内部にいる人間が見落としがちな問題点や改善点に気づくきっかけにもなります。
アウトソーシングを検討する際は、対応範囲やコスト、品質管理の方法などを事前に確認し、自社に合った業者を選択しましょう。
出典:カチアルサポート
業務マニュアルの必要性を感じつつも、「社内の人手が足りない…」「業務のノウハウを資料化するのは大変...」「PowerPointの操作が苦手...」などといった悩みを持つ企業も多いのではないでしょうか。そのような企業におすすめなのが、カチアルサポートです。
カチアルサポートは、様々なバックオフィス業務を好きなときに好きなだけ、厳選されたスタッフに依頼できるサービスです。依頼できる業務の1つとして業務マニュアル作成の代行があり、その他にも経理・営業事務・人事/採用・秘書・クリエイティブなど幅広い業務の依頼が可能です。
カチアルサポートでは、複数の業務を組み合わせて依頼できるため、業務マニュアルの作成とあわせて、他のバックオフィス業務をアウトソーシングすることで、さらなる効率化・人手不足解消を図ることができます。
アウトソーシングを上手く活用することで、採用・教育にかかるコストや手間も削減でき、社内の人手が不足する中で不慣れな作業に取り組むよりも良い結果が得られることもあります。
業務マニュアルの作成と運用は、企業の持続的な成長と効率化を実現するための投資だと考えられます。そして、業務マニュアルの作成によって体系化された知識やプロセスは、企業にとって大きな資産となります。自社の貴重な資産を蓄積し、知識の共有を促進することで、従業員はより生産的かつ一貫性のある業務遂行が可能になるでしょう。
とはいえ業務マニュアルの作成には膨大な工数がかかるため、簡単に進まない場合も多いのが現実です。
「業務マニュアルを作成したいけど、リソースに余裕がない」とお悩みの場合は、ぜひアウトソーシングを活用してみてはいかがでしょうか。プロの手を借りて業務マニュアルを効果的に作成・運用し、さらなる企業成長に繋げていきましょう。