「バックオフィス業務の人手不足が深刻化し、担当者への負担が増えている」
「雑多な業務に追われる日々を改善して、より戦略的な業務に集中したい」
このような悩みをお持ちの担当者は多いのではないでしょうか。
本記事ではバックオフィス業務を効率化するための具体的な方法を紹介します。
バックオフィス業務の概要や効率化によるメリットなどもあわせて解説するので、始めやすい取り組みから実践してみてください。
一般的にバックオフィス業務とは総務や人事、経理など、顧客との直接的な接点が少ない業務を指します。
主に管理業務や事務作業に従事しながら、企業活動の健全化に向けたあらゆるサポートを行います。
外部との関わりが少ない一方で、社内すなわち従業員とのコミュニケーションは頻繁に発生します。例えば労務管理や福利厚生、社内の情報ネットワーク支援などです。
フロントオフィス業務とは営業やカスタマーサポートなど、顧客と直接やりとりを行う業務のことです。
利益創出にも直接的に関わる業務であり、外部とのコミュニケーションが重視されます。
対してバックオフィス業務は、フロントオフィス業務で効率よく利益を上げられるようにサポートを行います。バックオフィスが後方支援という意味を持つことからも、フロントオフィス業務を縁の下で支える立場であるといえるでしょう。両者の違いを下記にまとめました。
バックオフィス業務 | フロントオフィス業務 |
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バックオフィス業務の主な役割は、企業のヒト・モノ・カネ・情報からなる経営資源の管理および活用です。
例えば人事業務では組織の人材を、経理業務では資金をそれぞれ効率よく活用する必要があります。経営資源の活用計画は、企業活動の根幹を担う重要な業務です。
さらに近年は、バックオフィス業務に対してより戦略的な役割が求められています。企業の課題解決や業務改善をけん引し、能動的に分析・検討する頭脳として、バックオフィス業務への期待はますます高まる傾向にあります。
フロントオフィス業務を適切にサポートし、企業全体の生産性を向上させるためにも、バックオフィス業務の強化は欠かせません。
バックオフィス業務と呼ばれる内容は広範囲にわたり、企業によっても分類の基準はさまざまです。
本章では一般的にバックオフィス業務とされる内容について、下記の7つを紹介します。
総務
経理
財務
人事・労務
法務
情報システム
その他一般事務
それぞれの解説を参考に、バックオフィス業務に関する理解をさらに深めましょう。
総務業務は、従業員にとって働きやすい職場環境を整備するための幅広い管理業務です。
組織内のさまざまな部門と連携し、業務遂行の円滑化を支えます。
<主な業務内容>
オフィス設備や備品・個人情報などの管理
就業規則や福利厚生などの整備
社内行事の企画・運営
経理業務は、企業の会計処理業務および税申告のための書類作成業務です。
経理資料は経営戦略や意思決定の重要な判断材料であり、正確かつ適時の情報提供が求められます。
<主な業務内容>
日々の取引の仕訳・伝票処理
支払い・請求業務
会計帳簿の作成・決算業務
給与計算
財務業務は、財務状況の評価業務および効率的な資金運用業務です。
リスクを抑えつつ利益を追求する財務戦略において重要な役割を担います。
<主な業務内容>
財務計画の策定・予算管理
財務分析と報告
資金調達や資産運用の計画策定・評価
人事・労務業務は、従業員の管理・手続き業務および育成・配置業務です。
適切な人事施策や労務管理を通して、従業員の満足度やモチベーションの向上をめざします。
<主な業務内容>
採用・退職の手続き
人事異動・人材育成
勤怠管理
法務業務は、法的リスクの管理業務および法令遵守の確保に関する業務です。
適切な法的アドバイスやリスク管理を行うことで、企業の信頼性向上および法的問題への対処能力を強化します。
<主な業務内容>
契約書等の作成・審査
コンプライアンス対応
知的財産管理
法律相談
情報システム業務は、ネットワーク環境の整備業務およびIT技術の導入業務です。
情報漏えいやサイバー攻撃などのリスクから企業データを保護するほか、ツールやシステムの導入により社内業務の効率化を推進します。
<主な業務内容>
社内のネットワーク構築・運用
ソフトウェアやアプリケーションの導入・保守
データバックアップ・セキュリティ対策
その他一般事務は、バックオフィス業務において日常的に発生するさまざまな事務作業です。
多くは単純作業の反復であり、定型化しやすい特徴があります。
<主な業務内容>
各種書類の作成
ファイリング処理
データ入力
重要な役割を担うバックオフィス業務ですが、多くの企業で業務のひっ迫や非効率性などの課題が生じています。バックオフィス業務を取り巻く主な課題は次の5つです。
人手が不足しやすい
業務が属人化しやすい
紙ベースでの業務が多い
人的ミスが発生しやすい
他部署の状況に左右されやすい
自社の現状と照らして、共通点がないか確認してみましょう。よくあることと放置せず、客観的視点から課題把握に努める姿勢が大切です。
少子高齢化や人材の流動化により、多くの企業で慢性的な人手不足に陥っています。
バックオフィス業務は直接利益を生み出す部門ではないため、人件費削減の対象になりやすい点が課題の一つです。
人手に余裕がない状態で幅広く業務をこなす必要があり、企業によってはフロントオフィス業務の担当者がバックオフィス業務を兼任しています。
業務量と人的リソースの不均衡が続いた場合、一人あたりの業務負担が増加し、健康状態の悪化やバックオフィス業務のサポート不全が懸念されます。社内の労働環境整備が行き届かず、離職者の増加により人手不足を悪化させてしまう可能性も否定できません。
バックオフィス業務の効率化に取り組み、少ない人員でも余裕を持って業務をこなせるような工夫が必要です。
バックオフィス業務には、簿記や法律などの専門知識・スキルを要する業務が多く含まれます。
したがって、担当者以外の従業員が代わりに業務を行うことが難しく、特定の従業員に業務が偏りがちになる点も課題の一つです。
業務が属人化すると、ミスや不正が発生しても発見しにくくなるほか、非効率な方法で業務が行われ続ける懸念もあります。
また、担当者の退職や休職時に業務の引き継ぎが難しくなり、無駄な時間と労力を費やしかねません。
業務を標準化するためにはマニュアル作成が効果的です。しかし日々の業務に追われて、つい後回しにしてしまう企業も多いでしょう。
バックオフィス業務には、請求書や経費申請書など、文書を扱う業務が多く含まれます。
電子帳簿保存法の改正により文書保存のデジタル化が進んでいるものの、人手や予算などが不足し対応が遅れている企業も多いです。
紙ベースでの業務を続けた場合、印刷や承認など、出社しなければ行えない作業が発生します。テレワークを希望する従業員にとって、働き方が制限されてしまえばモチベーション低下に繋がりかねません。
さらに文書作成・管理に要する金銭コストや、稟議承認に要する時間的コストの面でもデメリットがあります。
バックオフィス業務の効率化を見据え、時間をかけて文書のデジタル化を進めていくことが必要です。
バックオフィス業務は手作業による業務が多く、人的ミスが発生しやすい点も課題の一つです。
データの集計や照合、システムへの入力業務を手作業で行う場合、転記ミスやチェック漏れなどのリスクがあります。
数字の誤りや書類の紛失などが発覚した場合、企業としての信用に関わるほか、修正や確認のために余計な手間を費やさなければなりません。
IT技術を活用してデジタル化や自動化をすることで、人的ミスの軽減につながります。
バックオフィス業務は、業務内容が他部署の状況に左右されることも多く、スケジュール管理が困難であるといえます。
例えば、締め日直前に請求書や経費申請書がまとめて持ち込まれるケースです。繁忙期に備えた予定を組んでいても、予期せぬ業務量の増加に対応しきれないこともあります。
また、システムの不具合や災害などの発生時に迅速な対応が求められる都度、取り組んでいた業務を中断しなければなりません。
他部署の状況や環境変化、トラブルなどに左右されやすいバックオフィス業務は非効率化しやすく、結果として残業や休日出勤を発生させてしまいます。
バックオフィス業務が抱える課題を解決するためには、業務を効率化する工夫が必要です。
本章ではバックオフィス業務を効率化する主なメリットについて、以下の5点から解説します。
コストを削減することができる
人的ミスを軽減することができる
生産性が向上する
従業員満足度が向上する
緊急時にも事業を継続することができる
忙しいと日々のタスクを優先してしまいがちですが、バックオフィス業務の効率化は企業の生産性向上につながる重要な取り組みです。
メリットを把握し、優先的に実施することをおすすめします。
バックオフィス業務の効率化により、人件費や印刷費などのコストを抑えることができます。
例えば、請求書の発行やシステム入力などの定型作業の自動化により、作業時間を短縮することが可能です。同じ業務内容で人件費を減らせるため、生産性の向上につながります。
さらに、文書のデジタル化によりペーパーレスが促進されるため、印刷や配送の手間を省くことも可能です。印刷費と配送費も不要になり、コストの最適化を図ることができます。
バックオフィス業務の効率化により、人的ミスを軽減することができます。
例えば、ITツールの導入により集計・計算業務を自動化することで、手入力による計算誤りや入力漏れを防止することが可能です。
人的ミスの軽減によって確認・修正にかかる無駄な作業の発生を抑えられ、一人あたりの業務負担を大幅に減らすことができます。
さらに作業の正確性が向上するため、顧客からの信頼性が高まり、フロントオフィス業務の営業活動に良い影響をもたらします。
バックオフィス業務の効率化によって確保することができた時間を、マネジメントやガバナンス強化など、より付加価値の高い業務に充てることができます。
従業員がフロントオフィス業務とバックオフィス業務を兼任している企業では、業務の効率化により兼任状態を解消することも可能です。
限られた人員がそれぞれ重要な業務に集中することで効率的に事業を展開することができ、生産性の向上につながります。
バックオフィス業務の効率化は、従業員満足度の向上にも効果的です。
一人あたりの業務負担が軽減されることで、ワークライフバランスが改善され、心身の豊かさが増加します。
また、従業員が多様な働き方を選択することができ、仕事パフォーマンスの向上も見込めます。
従業員満足度を高く保つことで、バックオフィス業務を安定的に運営することが可能です。バックオフィス業務の安定は企業全体にもプラスに働き、円滑な業務遂行を維持します。
業務効率化にともない、文書のデジタル化やクラウド利用を進めることで、従業員が出社できない状況でも業務を遂行できます。
つまり、災害や事故などの緊急時にも事業を継続することができるため、大きな損害を防ぐことが可能です。
また、マニュアル作成などにより業務の属人化を解消することで、担当者の緊急事態に際して別の従業員が代替することができます。
バックオフィス業務を効率化するための着眼点は、主に次の3点です。
ペーパーレス化することができる業務はないか
自動化することができる業務はないか
外部に委託することができる業務はないか
3つの着眼点を意識することで、業務工程の課題や改善の余地が見えてきます。
紙ベースで管理していた書類をデジタル化することができないか検討しましょう。
デジタル化に移行することで、書類作成や印刷に要していた作業時間を大幅に削減することができます。
文書回覧や稟議承認などの業務フローの見直しも効果的です。デジタル化によって文書共有が効率化され、一度に多くの人が文書を確認することができるようになります。
近年は環境問題への対策としてもペーパーレス化に取り組む企業が増加しているため、着眼点の一つとして欠かせません。
単純作業や定型的な業務を、ツールなどで自動化することができないか検討しましょう。
IT技術の進化により、ツールやシステムによる自動化に置き換えられる業務は増加しています。同じ作業の繰り返しや、ルール化することができる業務に着目して自動化を促進することが大切です。
人手不足問題に対応するためには、人の力をより生産性の高い業務にシフトしていく必要があります。
自社で行う必要のない業務はアウトソーシング(外部の専門業者に代行してもらうこと)を活用することができないか検討しましょう。
バックオフィス業務の中には、必ずしも自社のリソースのみで処理しなくてもよい業務も含まれます。例えば取引の仕訳入力は複雑な作業を必要としないため、外部委託によってバックオフィス業務を効率化することが可能です。
アウトソーシングをうまく活用することで、自社のリソースを重要な戦略的業務に集中させることができます。
バックオフィス業務を効率化する方法について、以下5つのカテゴリ別に紹介します。
自動化ツールの導入
デジタル化の推進
情報共有の円滑化
業務マニュアルの作成
アウトソーシングの活用
本章で紹介した内容を、自社で取り入れる際のヒントにしてみてください。
チャットボットやRPAなどの自動化ツールを導入し、作業時間の削減を図る方法です。
導入コストや運用コストはかかりますが、長期的視点で人件費などを抑える効果が見込めます。主なツール・システムと内容は以下のとおりです。
主なツール・システム | 内容 |
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チャットボット |
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RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション) |
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OCR(Optical Character Recognition/Reader) |
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契約締結や帳票発行など、従来紙ベースで行っていた業務をデジタル化することで業務工程の短縮を図る方法です。
近年は、時と場所を選ばずアクセスすることができるクラウドサービスが主流となっています。
主なツール・システムと内容は以下のとおりです。
主なツール・システム | 内容 |
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勤怠管理システム |
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給与計算システム |
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電子契約システム |
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電子帳票システム |
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経費精算システム |
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ワークフローシステム |
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ビジネスチャットツールやオンラインストレージを導入することで、情報共有の円滑化を図る方法です。
業務の進捗状況や必要な資料をリアルタイムで共有することができるため、タスクの処理忘れや遅延防止、さらには業務の標準化に役立ちます。
主なツール・システムと内容は以下のとおりです。
主なツール・システム | 内容 |
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ビジネスチャットツール |
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オンラインストレージ |
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業務マニュアルの作成により、誰から見てもわかるように業務内容と手順を明確化する方法です。
担当者の異動や退職の際に、業務引き継ぎを正確かつスムーズに実施することができます。
マニュアル作成の負担が大きいと感じる場合は、業務工程を可視化するだけでも効果があります。担当者それぞれが業務の流れを書き出し、チームの共有フォルダに保存することから始めるといいでしょう。
バックオフィス業務の一部を外部に委託することで、自社で行う業務を効率化する方法です。
顧客との直接的な接点を持つフロントオフィス業務に対し、バックオフィス業務には単純作業の繰り返しが比較的多く含まれます。ツールやシステムの導入が難しい場合は、アウトソーシングの活用を検討してみましょう。
業務の繁閑にあわせて依頼量を柔軟に調整することができるサービスもあるため、業務負担や人件費を最適化することができます。
専門スタッフが高品質かつスピーディーに業務を代行するため、安心して一任することが可能です。
バックオフィス業務を効率化する主なポイントは次の3つです。
PDCAを回す
費用対効果の高い方法を選ぶ
導入ツールやシステムの操作性を重視する
3つのポイントを意識することで、取り組みの効果を高められる可能性があります。
バックオフィス業務を効率化するためには、課題の明確化から効果検証までの流れを継続的に実施し、長期的な視野で改善をめざすことが大切です。
まず各業務の手順や役割分担などを明らかにし、バックオフィス業務の現状を詳細に把握することから始めましょう。
次に、業務の実施過程で生じている問題を特定し、原因を分析したうえで具体的な解決策を検討します。
解決策を実行し、効果検証を行ったら、新たな課題の解決に向けて同様の工程を繰り返してください。PDCAを回すことで、徐々に業務効率化の効果があらわれてきます。
限られたリソースを効果的に活用し、無理なく業務効率の向上を図るためには、費用対効果の高い方法を選ぶことが大切です。
まずはツールやアウトソーシングなどの導入により、どれだけの効果が見込めるかを評価しましょう。
次に、導入コストや運用コストなどを見積もり、効果の見込みと比較します。
複数の方法を比較検討し、費用対効果の高い選択肢を見極めてください。機能性やサポート体制、サービスの実績や評判などあらゆる点から検討することが重要です。
また費用対効果は、投資回収期間や将来の利益見込みなども考慮し、長期的視野で判断しましょう。
ツールやシステムを導入する場合は、従業員が容易に操作することができるものを選ぶことが大切です。
従業員が迅速に操作方法を習得することで、導入後のトレーニングやサポートにかかるコストを削減することができます。業務効率化を達成するための即戦力となり、取り組みの成果を速めることも可能です。
使いやすいツールやシステムは、従業員のモチベーションを向上させ、生産性を高める効果があります。操作にあたる従業員には継続的なサポートを行いましょう。
カチアルサポートでは、バックオフィス業務の代行サービスを提供しています。
経理や秘書、採用・人事、マニュアル作成など幅広い業務に対応することが可能です。煩雑な作業をまとめてアウトソーシングすることで、自社の従業員はより生産性の高い業務に注力することができます。
厳選された正社員スタッフがサービス運用拠点に出社し、管理者の監督のもとで業務に従事するため、品質面・セキュリティ面ともに安心して利用することができます。
さらに、必要に応じて月ごとに依頼内容を組み替えることが可能です。エントリープランは月額43,000円(税込47,300円)から利用することができるため、コストを抑えつつ人手不足の解消を図ることができます。
カチアルサポートについて詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。
バックオフィス業務の概要や効率化によるメリット、さらには業務効率化のための具体的な方法まで解説してきました。
本記事のまとめは以下のとおりです。
<記事まとめ>
バックオフィス業務とは顧客との直接的な接点を持たない業務のことで、企業の経営資源を管理し活用する重要な役割を担う
デジタル化や自動化などによりバックオフィス業務を効率化することで、コスト削減や人的ミスの軽減につながるほか、緊急時の事業継続体制の整備にも有効
IT技術の導入やアウトソーシングの活用など、業務効率化の方法は多岐にわたるため、自社に適した改善策を取り入れることが大切
バックオフィス業務は、企業の健全な活動や持続的成長に欠かせない業務です。
業務の効率化を図り、より戦略的な業務に注力することができる体制を整えることで、企業全体の生産性向上につながります。
本記事で紹介した方法を参考にして、今すぐできることから始めましょう。