経理アウトソーシングとは、自社の経理業務を外部の専門業者に委託することです。
「経理のアウトソーシングに興味があるけど、業者選びに失敗したくない」
「本当に効果があるのだろうか?」
このように考える企業担当者は多いでしょう。
本記事では経理のアウトソーシングを導入するメリットやデメリット、適切な業者を選ぶためのポイントなどについて詳しく解説します。サービス導入を検討する際の手引きとしてご活用ください。
経理アウトソーシングとは、自社の経理業務を外部の専門業者に委託することです。働き手不足の解消や業務効率化の推進を求める社会的背景が影響し、近年注目を集めています。
主な業務内容は次のとおりです。
記帳、仕訳入力
請求書、納品書などの受領や発行
売掛金や買掛金の管理
振込データの作成
給与計算・年末調整
決算書作成・決算申告 など
経理だけでなく社会保険の手続きや人事・採用業務など、バックオフィス業務全般を扱う業者もあります。
経理アウトソーシングは個人事業主から大企業まで、従業員規模を問わず下記のような様々なシーンで活用されています。
経理部門に欠員が出たが、新たな人材を雇う余裕がない
休職の一時的な穴をスポット的に埋めたい
一人に過度な業務負担がかかっているため、専門知識を持つサポーターがほしい
繁忙期だけに発生する残業時間をなくしたい
経営陣が経理業務に多くの時間を割いてしまっている
スタートアップやベンチャー企業で経理の人材を募集しているが、経験者の採用が難しい
事業成長にともない、経理業務の効率化が急がれる
自社において、一つでもあてはまる場合は、経理のアウトソーシング化を検討してみることがおすすめです。
経理アウトソーシングにおける業務内容の費用相場は次のとおりです。
業務内容 | 費用相場 |
記帳業務 | 1仕訳あたり 100円程度/月 |
給与計算業務 | 従業員1人あたり 1,000円程度/月 |
決算業務 | 100,000円~(売上額や業務範囲によっては、50,000円~) |
業者により多種多様な料金プランを備えているため、あくまで目安として参考にしてください。
記帳業務は仕訳数に応じて料金設定されるのが一般的です。仕訳・記帳作業のみの場合、1仕訳あたり月額100円程度が相場となっています。
帳簿作成まで委託するかどうかで料金が変動したり、税理士監修や会計システム導入支援などをオプションとしてつけられる場合もあります。
給与計算業務の料金設定は、基本料+(従業員数×単価)のパターンが多いです。月額換算すると、従業員1人あたり1,000円程度が相場です。
ただし勤怠集計や賞与計算、年末調整は別料金となる場合があるため、業務範囲をよく確認してください。
決算書や法人申告書の作成、電子申告などを代行します。業務内容や事業規模によって金額は大きく変動しますが、少なくとも100,000円は見積もっておきましょう。
業務の一部のみを依頼する場合、50,000円から対応してくれる業者もあります。
経理アウトソーシングのメリットは主に次の7つです。
人手不足を解消できる
業務の属人化を防止できる
コア業務に集中できる
専門性の高いサービスが受けられる
最新の法改正に対応できる
必要なリソースを柔軟に確保できる
社内の不正を防止できる
経理アウトソーシングを効果的に利用すれば、企業の課題解決および持続的な成長につながります。
企業の働き手不足が慢性化し、実績やスキルを持った人材の採用や維持はますます困難な状況です。アウトソーシングを利用すれば、新たな人材を採用することなく経理の専門スキルを確保できます。求人の過程で生じるコストや採用後の人件費も削減可能です。
経理業務は専門性が高く、処理手順や必要情報を担当者だけが把握している状態になりがちです。属人化すると担当者の不在時に業務が停滞するほか、退職時の引き継ぎに時間とコストがかかります。経理アウトソーシングなら業務の属人化を防ぎ、安定的な運営が可能です。
コア業務とは、収益や業績の向上、あるいは経営に直結する業務を指します。事業を発展させるためには、そのようなコア業務に注力する必要があります。
しかし、従業員数の少ない企業や個人事業主は、1人で複数の業務を担当しなければなりません。煩雑な経理業務に時間と労力を割き、他の戦略的な業務やクリエイティブ作業に取り組めないことも多いでしょう。
経理アウトソーシングの導入により、業務負担が軽減しコア業務に集中できます。
経理アウトソーシング業者は、高い専門性と豊富な実績を持つチームです。専門業者に経理業務を代行してもらうことで、専門的なサービスを迅速かつ安定的に受けられます。
経理業務は法改正や制度変更と密接に関連するため、正しく処理できているか不安を感じる担当者も多いでしょう。
経理アウトソーシング業者は、最新の法改正や会計基準に精通しています。サービス利用により法認識の誤りや人的ミスの防止につながり、会計処理の正確性向上が期待できます。
経理アウトソーシングを活用することで、必要なリソースを柔軟に確保できます。事業規模やフェーズによって、頼みたい業務内容や業務量は異なります。
例えば、起業直後に一切の経理業務を外注し、事業が軌道に乗り始めた段階で業務範囲を指定して外注するパターンなどです。
さらに繁閑期が明確な場合や、一時的な欠員補てんが必要な場合など、期間を限って外注したいケースもあるでしょう。
経理アウトソーシングでは積み上げたノウハウをもとに、提供するリソースに柔軟性を持たせることが可能です。
限られた従業員しか経理の業務プロセスを知らない場合、不正行為のリスクが高まります。
経理アウトソーシングは独立した第三者としての役割を担うため、改ざんや横領の防止に効果的です。経理業務を1人が担当する際のチェック機能としても働き、業務の透明性を確保できます。
経理アウトソーシングのデメリットは主に次の6つです。
ノウハウを蓄積できない
経営状況を把握しにくい
今以上のコストを要する場合がある
急な変更への対応が困難になる
情報流出の可能性がある
経費処理重複のリスクが生じる
プラス面だけでなくマイナス面も把握したうえで、適切な対策を行いましょう。
経理アウトソーシングを利用することで、従業員による経験の機会が失われます。
社内に経理業務のノウハウが蓄積されないため、内製化した際には知識を一から習得しなければなりません。
今後、内製化の可能性を残す場合は、業務の一部のみを外注するなど人材育成を妨げない工夫が必要です。
経理業務をアウトソーシングすると、数字のタイムリーな変動を把握しにくくなります。数字の把握が遅れると適切な分析ができず、経営判断に影響をおよぼす可能性があります。
外注業者への丸投げではなく、密な情報共有により経営状況を把握することが大切です。
アウトソーシングする業務の範囲や品質によっては、内製化に比べて費用が高くなる場合もあります。
業務変更などにともなう追加コストの発生も視野に入れ、費用対効果を慎重に考慮したうえで契約することが大切です。
アウトソーシングを決めかねる場合は、業務プロセスのマニュアル化やDX化の推進など、自社でできることから始めてみてください。
経理アウトソーシング業者は契約書の範囲内で業務を行うため、イレギュラーな事態に対応しにくいというデメリットがあります。
社内に経理業務の担当者がいない場合、トラブル発生時の対応にタイムラグが生じることを視野に入れましょう。
業務の遅延や品質低下を防止するためにも、急な変更への対応方法や速度などの事前確認が必須です。
アウトソーシングを利用する場合、自社の情報を外部に共有します。
不正アクセスや情報流出のリスクを避けるため、外注業者のセキュリティレベルは十分に確認しておきましょう。自社よりもセキュリティレベルの高い業者を選び、逆にメリットとして活用することが大切です。
経理業務の一部をアウトソーシングする場合、外注業者と自社の双方で同じ経費処理をしてしまう可能性があります。
財務データに不整合が見つかれば、確認作業の手間が発生してしまいます。
外注業者との情報共有を十分に行い、業務の明確な分担と調整が必要です。
経理アウトソーシング業者選びの主な判断基準は次の7つです。
頼みたい業務を担ってくれる
業務品質が高い
コミュニケーションが取りやすい
セキュリティレベルが高い
費用対効果が高い
迅速で柔軟な対応ができる
専門資格を保有している
サービスの導入を企業利益につなげるため、自社にとって最適な業者を選びましょう。
委託したい具体的な業務が対応可能かどうかを確認します。特定の業務や期間に限って頼みたい場合は、自社のニーズにどこまで応えてくれるのかを重視して選びましょう。
業者のホームページや資料などで確認できなくても、個別の相談で対応してくれる可能性があります。業者の担当者に聞いてみるのがおすすめです。
品質管理に信頼のおける業者かどうかを見極めます。専門性やスキルの高さ、サービスや指導のきめ細かさなどを確認しましょう。
導入実績の多さや顧客評価の高さは、信頼性を判断する一つの基準です。
迅速な情報共有や問題解決が可能かどうかは、業者選びに重要な要素です。円滑なコミュニケーションにより進捗状況が可視化され、業務の遅延や二重処理の防止につながります。
自社の業務内容や風土を理解し、寄り添った提案をしてくれるかどうかもポイントです。
情報セキュリティポリシーなど、業者のセキュリティ対策の確認は必須です。大切な企業情報を慎重に管理してくれる業者を選びましょう。
セキュリティレベルの高さを証明する基準として、プライバシーマーク(Pマーク)取得業者や情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証業者などがあります。
サービス内容や料金体系を比較し、自社の利益につながると判断できる業者を選びましょう。
業者に支払う費用以外にも、会計ソフトの導入など関連コストが発生する場合もあります。
経理アウトソーシングの利用にともなって生じる労力も含め、予測可能なコストをできるだけ明確にすることが大切です。
業者にとって、急な変更への迅速な対応は困難です。しかし変化の激しい時代を迎え、ビジネスにおける柔軟性はますます重視されています。対応スピードや適応力に優れ、頼れるパートナーになってくれるかどうかを注視しましょう。
業者の中には、経理や会計に関する専門資格の保有を強みとして打ち出す場合があります。
税理士事務所や公認会計士事務所が経理アウトソーシングサービスを行うケースも多いです。日常業務のほか、専門家による税申告などのアドバイスやコンサルも受けたい場合は検討してみてください。
経理アウトソーシングを導入する前にしておくべき主な準備は次の3つです。
解決したい課題と予算の明確化
共有する資料の整理
リスクアセスメントの実施
サービスの効果的活用を実現するため、十分な準備を行いましょう。
経理業務に関する自社の課題を洗い出し、解決に向けた改善ポイントを社内で共有します。
依頼する業務範囲を決定し、迷う点は業者に相談できるよう箇条書きにしておきましょう。
業者との打ち合わせで希望金額を伝えられるよう、予算を明確にすることも大切です。
請求書や領収書など、業者と共有するすべての資料を整理しておきましょう。
様々な資料が混在した状態で提出すると、振り分け料金が発生する可能性もあります。
アウトソーシングする前に、必要な資料をわかりやすくファイリングしておくことをおすすめします。
情報流出を防ぐため、想定されるリスクの洗い出しや分析を行うことも大切です。
リスクの特定と対策を行い評価する一連の流れを、リスクアセスメントといいます。
自社でも情報セキュリティに関する知識を習得し、情報漏えいのリスクに備えてください。
本章では経理アウトソーシングサービス実施企業を5社紹介します。
カチアルサポート|NTT印刷株式会社
マネーフォワードクラウド経費BPO|株式会社マネーフォワード
freee経理アウトソース|フリー株式会社
PASONA BPO・アウトソーシングサービス|株式会社パソナ
経理業務アウトソーシング|パーソルワークスデザイン株式会社
サービス内容などを比較して、自社のニーズに合致する業者を選びましょう。
サービス名 | カチアルサポート |
費用 |
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業務範囲 | 経理、営業事務、秘書・人事/採用などに幅広く対応 |
特徴など |
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サービス名 | マネーフォワードクラウド経費BPO |
費用 | 要問い合わせ (50名以下の場合、1か月無料トライアルあり) |
業務範囲 | 特定業務に特化 |
特徴など | 領収書や請求書の定型的な処理業務に特化 |
参考:マネーフォワードクラウド経費 BPOサービス
参考:マネーフォワードクラウド経費 マネーフォワード クラウド経費の料金
freee経理アウトソースは、請求書受領に関わるノンコア業務に特化したサービスです。
請求書のデータ化から債務管理まで対応し、経理業務の安定化とデジタル化を促進します。
電子帳簿保存法とインボイス制度に対応しているため、法改正に不安な企業にもおすすめです。
サービス名 | freee経理アウトソース |
費用 | 要問い合わせ |
業務範囲 | 特定業務に特化 |
特徴など | 請求書受領に関わるノンコア業務に特化 |
PASONA BPO・アウトソーシングサービスは、企業や自治体からの受託実績によるノウハウをもとに、調査・業務設計・運用までワンストップで対応します。
経費精算や入金処理など、経理・財務業務に関するBPOサービスです。
企業の業務最適化と安定運営を実現するため、幅広くサポートを行っています。
サービス名 | PASONA BPO・アウトソーシングサービス |
費用 | 要問い合わせ |
業務範囲 | 経理・財務業務に幅広く対応 |
特徴など | 調査・業務設計・運用までをワンストップで実施 場所(オンサイト/オフサイト)と契約形態(業務委託/ユニット派遣/派遣)を組み合わせた提案も可能 |
パーソルワークスデザイン株式会社の経理業務アウトソーシングは、BPO専業50年のノウハウと実績で信頼性を確保するサービスです。
仕訳入力やデータ作成、入金消込など会計・経理業務に幅広く対応しています。
業務のDX化や標準化、顧客に合わせた個別設計が特徴です。
サービス名 | パーソルワークスデザイン経理業務アウトソーシング |
費用 | 要問い合わせ |
業務範囲 | 会計・経理業務に幅広く対応 |
特徴など | BPO専業50年のノウハウと実績 |
経理のアウトソーシングを導入するメリットやデメリット、適切な業者を選ぶためのポイントなどについて詳しく解説してきました。
本記事のまとめは次のとおりです。
経理アウトソーシングで失敗しないためには、自社の要望に応じたサービスを提供してくれる業者を選び、密に連絡を取り合うことが大切
課題や予算の明確化・資料の整理など、事前準備が成功につながる
経理アウトソーシングは、企業の成長戦略として重要な要素です。導入によって経理業務の効率化および正確性の向上が期待できます。
ただし、外注にともなうリスクやデメリットも十分に考慮する必要があります。適切な業者選びと事前準備を行い、経理アウトソーシングを効果的に活用しましょう。