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経理マニュアルの作り方とは?コツやよくある失敗例を解説

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「経理部門の人手が足りず業務の停滞が発生している」

「経理業務を効率的に進めたいがうまくいっていない」

といったお悩みを抱えている経理担当者は少なくないのではないでしょうか。

業務属人化の解消や業務効率化をめざすうえで、有効な施策の一つが「マニュアルの作成」です。そして、経理業務においてもマニュアルを作成することで、業務改善が期待できます。

本記事では、経理部門がマニュアルを作成するメリットからマニュアル作成のステップ・コツ、さらにはよくある失敗例までを詳しく解説します。

経理部門が抱える4つの課題

自社の財務状況を把握するために、経理部門は重要な役割を担います。

経理部門が抱える課題を解決することは企業全体の健全な運営に欠かせません。経理部門が抱える主な課題として、以下の4つが挙げられます。

  • 専門的な知識が必要なため属人化しやすい

  • 部門の人数に対して作業量が非常に多い

  • 作業の遅延が起こりやすい

  • イレギュラーな対応が多い

専門的な知識が必要なため属人化しやすい

経理業務は簿記や税務面など、多岐にわたって専門的な知識やスキルが必要とされるため、特定の従業員に業務が集中し、属人化しやすくなります。

そのため、担当者が不在の場合に業務が停滞してしまったり、急な離職の際に業務の引き継ぎがスムーズに行われなかったりということが発生します。

部門の人数に対して作業量が非常に多い

経理部門は業務の幅が広く、その業務量も非常に多い一方、新たな人員が配置されにくく、一人当たりの業務負担が大きくなりやすいといった特徴もあります。

特に月次決算や年次決算などの締め切りが迫ると、経理担当者は長時間労働を強いられることもあります。長時間労働は従業員のモチベーションを低下させるだけでなく、業務効率の低下やミスの発生率が高まる原因となるため、早急な改善が必要です。

作業の遅延が起こりやすい

経理業務は時間的な制約が厳しく、締め切りに追われることが多くあります。しかし、他部門からの請求書データなどの提出の遅れにより、作業が遅延することがあります。

また、会社の資金を扱う業務であるため、正確性が求められます。1桁のミス、1円の誤差が経営に大きな影響を及ぼすため、「ミスが許されない」と慎重になり、業務に時間がかかり、遅延につながってしまうということもあります。

いずれにせよ、経理業務の遅延は企業の信用に関わる重大な問題となるため改善が必要です。

イレギュラーな対応が多い

経理はルーティン業務が多いと思われがちですが、実際はイレギュラーな対応が頻繁に求められる部門です。例えば、税務調査や内部監査、法改正に伴う処理の変更などが挙げられます。これらのイレギュラーな対応によって担当者はさらなる負担を強いられ、通常業務の進行が妨げられてしまいます。

イレギュラーな対応を迅速かつ正確に行うためには、経理部門全体のスキルアップと柔軟な対応力が求められます。また、ルーティン業務を確実に、効率的に行えるようにしておくといったことも重要です。

経理マニュアルを作成するメリット

経理マニュアルを作成するメリットを解説します。

  • 属人化を防止することができる

  • 業務を効率化することができる

  • 組織内のノウハウを集約することができる

属人化を防止することができる

経理業務は専門的な知識が必要であり、特定の従業員に業務が集中しやすい傾向があります。経理マニュアルを作成することで、業務手順や重要なポイントが明文化され、誰でも同じように業務を進めることができるようになります。これにより特定の従業員に依存することなく業務停止のリスクが低減し、安定した業務の継続が可能となります。

また、新入社員や異動してきた社員も、マニュアルを参考にすることで効率良く業務を習得でき、スムーズな引き継ぎが実現します。

業務を効率化することができる

業務手順やルールが明確になることで、業務の効率化にもつながります。経理業務には多くの細かい作業が伴います。マニュアルにより各作業の手順や注意点が具体的に示されることで、迷うことなく業務を進めることができます。これにより作業の効率が向上し、ミスの発生も減少するでしょう。

さらに、マニュアルの作成を通じて業務フローを整理する中で、不要な作業が可視化されるというメリットもあります。全体的な業務工程が改善されれば、経理部門全体の生産性向上も期待できるでしょう。

組織内のノウハウを集約することができる

経理マニュアルがあれば、業務に関する知識やノウハウを部門全体で共有することができます。経理業務は専門性が高く、個々の従業員が持つ知識や経験が大きく影響します。

しかし、その知識やノウハウが個人に留まってしまうと、部門全体の成長が妨げられることになりかねません。

経理マニュアルを作成することで、各々が持つ知識やノウハウが体系的にまとめられ、誰でも参照できる状態にすることができます。

従業員は新たな知識を吸収しやすくなり、部門全体のスキルアップが促進されるでしょう。

経理マニュアルの作成ステップ

経理マニュアルを作成し始める前に、まずは全体の流れを把握することが重要です。経理マニュアルを作成する流れは以下の4ステップです。

  1. 業務内容や手順を整理する

  2. 構成を作成する

  3. 本文を作成する

  4. 運用・改善を継続する

<ステップ①>業務内容や手順を整理する

初めに、経理部門の業務内容や手順を整理します。経理業務は多岐にわたるため、それぞれの手順や関連する資料、使用するシステムなどを詳細に洗い出す必要があります。各業務を担当する従業員にヒアリングを行い、実際の業務の手順を把握していきましょう。

また、過去のトラブルや改善点も併せて確認することがおすすめです。

<ステップ②>構成を作成する

業務内容の整理が完了したら、マニュアルの構成を作成します。構成を考える際には、マニュアルを見る人が必要な情報にすぐアクセスできるよう、分かりやすく体系立てることが重要です。

マニュアルを構成する主な項目例は以下のとおりです。

目次

知りたいことを目次から見つけられるように、適切な見出しを並べます

更新履歴

業務手順やフローの変更に伴い、マニュアルを改定した際には更新日と更新内容を履歴として残しておきます

業務の手順

章ごとに「日次業務」「月次業務」「年次業務」「特別業務」などのカテゴリーに分けるのがおすすめです

業務に必要なもの

業務を行う際に用いる道具やシステムについて明記します

業務のルール

業務を行ううえで守るべきルールや注意事項を記載します

業務のチェックリスト

正しく業務が行えたかを確かめる際に活用します

ヘルプページ

「困ったときは」のようなタイトルをつけて、利用者の悩みを解決する情報をまとめます


<ステップ③>本文を作成する

構成が定まったら、いよいよ本文の作成です。手順ごとの詳細な説明や注意すべきポイント、コツなどを明記し、マニュアルを見た人が迷わずに業務を進められるようにします。

本文作成では、その業務に初めて携わる人の視点に立つことが重要です。

専門用語をできるだけ避け、誰でも理解しやすい言葉を用いるようにしましょう。また、必要に応じて図解などを活用することで、視覚的に分かりやすいマニュアルとなります。

作成後は複数の担当者でチェックを行い、分かりにくい部分や誤解を招く表現がないかを確認することも重要です。

<ステップ④>運用・改善を継続する

マニュアルが完成したら、実際に運用を開始します。しかし、マニュアルは作成して終わりではなく、継続的な改善が必要です。

運用開始後に現場からのフィードバックを収集し、実際の使用感や改善点を把握しましょう。また、法改正や業務工程の変更が発生した場合には、速やかにマニュアルを更新し、最新の情報を反映させることが重要です。

定期的な見直しと更新を行うことで、常に現場の業務に即した有用なマニュアルを維持することができます。

経理マニュアル作成で起こりがちな失敗例

メリットの多いマニュアルですが、実際に作成・運用を始めるとうまくいかないこともあります。経理マニュアル作成で起こりがちな以下2つの失敗例について解説します。

  • 作成途中で挫折してしまう

  • 情報が更新されない

作成途中で挫折してしまう

経理マニュアルの作成は、非常に時間と労力がかかる作業です。特に、通常業務の合間でマニュアルを作成するような場合は、マニュアル作成が後回しになってしまいがちです。

この失敗を避けるためには、作成作業を1人に任せるのではなく、部門全体で分担して進めることが効果的です。

例えば、各セクションに担当者を決め、それぞれが責任を持って進めることで負担を分散させることができます。

さらに、作業のスケジュールを細かく設定し、定期的に進捗状況を確認することも有効です。適切な中間目標を設定し、達成感を得られるようにすることで、作業へのモチベーションを維持することができます。

情報が更新されない

マニュアル作成後、情報が更新されず、結局活用されていないといったこともよくある失敗例です。経理業務は法令や企業の方針の変更により業務フローの変更を求められることもあります。

その場合、マニュアルが古い情報のままでは業務ミスやトラブルの原因となりかねません。

更新されない状況を防ぐためには、マニュアルの定期的な見直しと更新を行う仕組みを作ることが重要です。例えば、「四半期ごとにマニュアルの確認・修正を行う」といったルールを設定します。また、法改正や重要な業務変更が発生した際、速やかにマニュアルへ反映できるよう、担当者や変更手順をあらかじめ整理しておくことも必要です。

誤りや混乱を防ぐためにも、マニュアルを変更した際はその履歴を明確に記録し、いつ誰がどの部分を更新したのかを追跡できるようにしておくと良いでしょう。

経理マニュアルを作成する際の3つのコツ

分かりやすい経理マニュアルを作成するためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。ここでは、経理マニュアルを作成する際の以下3つのコツについて解説します。

  • 図やフローチャートを活用する

  • ミスやトラブルを想定した内容を盛り込む

  • 時系列でまとめる

図やフローチャートを活用する

経理業務の手順は複雑なため、文章だけでは理解しにくい場合があります。そこで、図やフローチャートを活用することで、見やすいマニュアルを作成することができます。

また、単純に見やすいだけではなく、各作業がどのように連携しているのかを視覚的に理解でき、全体像を把握しやすくなることもメリットです。例えば、仕訳の流れや決算手続きのステップをフローチャートで示すことで、全体の流れを把握しやすくなるでしょう。

経理部門ではそれぞれの業務が関連し合っていることも多いため、図やフローチャートによって業務理解の促進が期待できます。

ミスやトラブルを想定した内容を盛り込む

業務にはミスやトラブルがつきものです。これらのリスクを最小限に抑えるためには、ミスやトラブルを想定した内容をマニュアルに盛り込むことが重要です。

例えば、よくあるミスや過去に発生したトラブル事例を具体的に記載し、それに対する対処法を示すことで、担当者が同じミスを繰り返さないようにすることができます。

また、トラブルが発生した際の連絡先や対応フローを明確にしておくことで、問題が発生した際の混乱を最小限に抑え、迅速な解決につながります。

さらに、ミスを防ぐためのチェックリストや注意点を盛り込むことで、業務の精度を高めることができるでしょう。

時系列でまとめる

経理業務は、日次・月次・年次といった時間の流れに沿って行われることが多いため、マニュアルを時系列でまとめることが有効です。時系列でまとめることで、各時点で何をすべきかを把握でき、業務の漏れや遅れを防ぐことができます。

また、繁忙期や特定の時期に集中する作業についても、事前に準備がしやすくなります。

日次・月次・年次別の経理業務は主に以下のようなものがあります。

日次

売上集計

現金・預金の管理

帳簿・伝票の記入

月次

請求・支払い業務

給与計算・支払い

源泉徴収税や社会保険料の納付

年次

決算書類の作成

年末調整

各種税金の納付


経理マニュアルを作り始める前に決めること

経理マニュアルの作成をスムーズに進めるためには事前準備も重要です。作成に取りかかる前に、以下3つの事項を決めておくとよいでしょう。

  • 担当者・責任者の決定

  • 利用するツールの検討

  • アウトソーシング活用の検討

担当者・責任者の決定

経理マニュアルの作成を始める前に、担当者や責任者を明確に決めておきましょう。マニュアル作成は1人で行うには労力がかかる作業であり、チーム全体で協力して進めることが重要です。

責任者は全体の進行管理や各メンバーの作業状況を把握し、スケジュール通りに進むよう調整する役割を担います。そして、マニュアルの作成を行う担当者は、日次業務・月次業務・年次業務など、セクションごとに分かれて作業をすることで効率よく進めることができます。

各メンバーの役割と責任範囲を明確にすることで、経理マニュアル作成の進行がスムーズになるでしょう。

利用するツールの検討

利用するツールも事前に決めておきましょう。マニュアル作成では大量の情報を整理し、分かりやすくまとめる必要があるため、適切なツールの選定が重要です。一般的にはWordやExcelなどのOfficeソフトなどが利用されますが、近年はITツールを活用する企業も増加傾向にあります。

例えば、クラウドの文書管理システムを利用することで、複数の担当者が同時に作業を進めることができ、リアルタイムでの更新や共有が可能となります。

また、視覚的に分かりやすいマニュアルを作成するためには、デザインツールやプレゼンテーションソフトも検討すると良いでしょう。

アウトソーシング活用の検討

特にリソースに限りがある中小企業やスタートアップ企業にとっては、アウトソーシングの活用も一つの選択肢です。マニュアル作成作業自体を外部に依頼することで、質の高いマニュアルを短期間で作成することが可能です。

アウトソーシングのメリットとしては、専門的なスキルや経験を持ったスタッフが作業を行うため、ミスや抜け漏れが少なく、完成度の高いマニュアル作成が期待できることが挙げられます。

また、社内のリソースを他の重要な業務に集中させることができるため、全体的な業務効率の向上にもつながります。

アウトソーシングを検討する際には、信頼できる業者の選定が重要です。対応範囲やコスト、品質管理の方法などを事前に確認し、自社に合った業者を選択しましょう。

経理マニュアルの作成代行ならカチアルサポートへ

出典:カチアルサポート

経理マニュアルの必要性を感じつつも、

「社内の人手が足りない」「業務のノウハウを言語化するのは大変」などといった悩みを抱える企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

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カチアルサポートは、さまざまなバックオフィス業務を好きな時に好きなだけ、厳選されたスタッフに依頼できるサービスです。

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カチアルサポートでは、複数の業務を組み合わせて依頼することができるため、経理マニュアルの作成と合わせて他のバックオフィス業務をアウトソーシングすることで、さらなる効率化や人手不足解消が期待できます。

また、継続してカチアルサポートをご利用いただくことで、滞りやすい業務マニュアルの更新も依頼が可能です。

費用

初回限定エントリープラン 43,000円/月(税込 47,300円)

月内利用時間12時間、契約月数3ヶ月


ライトプラン       55,000円/月(税込 60,500円)

月内利用時間12時間、契約月数3ヶ月


スタンダードプラン    118,000円/月(税込 129,800円)

月内利用時間30時間、契約月数6ヶ月


プロプラン        106,000円/月(税込116,600円)

月内利用時間30時間、契約月数12ヶ月

業務範囲

秘書、営業事務、経理、採用・人事、クリエイティブ、簡易翻訳、リサーチ 等

特徴

・稼働時期、業務内容の自由な組み合わせ

・厳しい採用過程を通過した正社員のアシスタント

・マニュアル不要で業務を依頼可能
(サービス側でマニュアル作成、業務の切り出しサポートを実施)

参照:NTT印刷株式会社 カチアルサポート

経理マニュアルの作成で部門の課題を解決しよう

業務量が多く属人化しやすい経理業務において、マニュアルの作成は必要不可欠ともいえます。経理マニュアルの作成は、単なる業務手順の文書化にとどまらず、経理部門全体の業務効率化やパフォーマンス向上に寄与するでしょう。

ただし、マニュアルを作成して終わりではなく、運用や改善を継続することも大切です。

「経理マニュアルを作成したいけど、リソースに余裕がない」とお悩みの場合は、ぜひアウトソーシングを活用してみてはいかがでしょうか。

自社に合った方法でマニュアルを作成・運用し、経理部門が抱える課題の解決につなげていきましょう。