総務代行とは、企業の総務業務を代行するサービスです。
「日々の定型業務が多すぎて、コア業務に手が回らない」
「業務改善を図りたいが、忙しくて時間がない」
このように悩む総務担当者は多いでしょう。
本記事では総務代行の概要やメリット・デメリット、業者選びのポイントなどについて詳しく解説します。
総務代行を活用し、業務の効率化をめざしましょう。
総務代行とは、秘書や人事・労務などの総務業務を外部業者に代行してもらうことです。
総務部門で扱う担当業務や解決したい課題は、企業によって異なります。自社の要望と合致する業者に総務業務を代行してもらうことで、本来優先すべき業務への集中や人件費削減などの効果が期待できます。
少子高齢化による企業の人手不足は深刻です。人材採用は年々難しくなり、社内の人的リソースを効率的に運用する動きが広がっています。
総務代行が注目される理由は、外部へ業務を委託することによって人手不足の解消と生産性向上の実現をめざせるからです。
もう一つの背景は、総務業務に求められるレベルの向上です。相次ぐ法令改正や制度変更に自社だけで対応しようとすると難しく、専門家による高度なノウハウを必要とするケースが増えています。
近年は職場のDX化が進み、テレワークが普及しました。しかし総務担当者は窓口や電話応対などのためだけに出社しなければならないことも多いでしょう。総務代行は総務担当者の出社の必要性を大幅に減らし、柔軟な働き方に対応できる点からも注目されています。
従業員一人当たりの負担を減らし従業員の定着率の向上につなげるためにも、総務代行が果たす役割は重要です。
総務代行業者に依頼できる主な業務内容は以下のとおりです。
秘書業務 | ・受付・電話応対 ・メール室運営 ・文書管理 |
人事・労務業務 | ・勤怠管理 ・給与計算 ・採用事務 |
オフィス管理業務 | ・施設の維持管理 ・固定資産管理 ・社有車管理 |
情報端末管理業務 | ・パソコンや業務用スマートフォンの管理 ・情報端末操作のヘルプデスク対応 ・システム構築サポート |
業務改善業務 | ・経費の見直し ・業務プロセスの改善 ・ワークフローの導入 |
総務代行では電話やメールの対応から業務改善まで、幅広い業務を取り扱います。
ただし上記はあくまで業務内容の例であり、対応可能な業務は業者によって異なるため注意してください。
依頼したい業務が決まったら、対応可能かどうかを業者に相談してみましょう。
総務代行の主なメリットは次の5つです。
コア業務を優先できる
属人化を防止できる
欠員なく業務が安定する
コスト削減をめざすことができる
業務品質が向上する
総務代行をうまく利用することで効率よく業務に取り組めるようになり、コストの無駄もカットできます。
コア業務とは直接的に成果や利益を生み出す業務のことで、企業のさまざまな課題を解決するための戦略立案や経営企画などをさします。
総務担当者は電話応対や文書管理などの細かい定型業務が多く、コア業務を後回しにしてしまいがちです。しかし企業成長のためにはコア業務を重視し、戦略総務としての機能を強化することが求められます。
定型業務はマニュアル化しやすく、総務代行業者への依頼に適しています。定型業務に割いていた時間をコア業務に回し、優先して取り組みましょう。
代行業者によっては業務の処理フローやマニュアル作成までサポートしてくれる場合があるため、業務内容が可視化され、属人化防止に有効です。
総務業務は専門性が高く、限られた担当者しか業務プロセスを知らない場合も多いでしょう。総務業務を外部委託から内製化に戻した場合、業務プロセスを知る従業員が誰もいないという可能性も否定できません。
処理方法が複数名で共有されていれば、代行利用前の担当者がいなくてもスムーズに取り組めるほか、一人あたりの業務負担も軽減されます。
さらに、業務の属人化を防止できれば不正行為のリスクも減少します。
総務代行業者の利用により第三者の視点が介入するため、データ改ざんなどの防止に効果的です。
総務代行の利用は、業務の安定的な遂行のために有効な手立てとなります。
自社採用の人材で総務業務を行う場合、担当者の退職や休職がいつ発生するかわかりません。人員が入れ替わる都度新たな担当者への引き継ぎや教育に時間をとられていては、通常業務が滞ってしまいます。
総務代行を利用すれば、欠員の不安なく業務を一任することが可能です。仮にスタッフ交代があっても一定の品質が担保されるため、総務業務がつねに安定します。
自社採用の場合は人件費が固定されるため、繁忙期に合わせた人員配置を行えば閑散期にも一定の人件費がかかり続けます。
時間単位で料金が設定される総務代行プランを利用すれば、発生する業務量に応じた依頼内容の柔軟な調整が可能です。人件費の変動費化により、コスト削減が期待できます。
さらに総務代行スタッフは自社採用の従業員ではないため、勤怠管理や給与計算、社会保険手続きなどの労務管理が発生しません。適切なプランを選べば、自社採用と比べて相対的にリーズナブルな運用が期待できます。
総務代行業者は法律や制度改正、システム・ツールに精通しているため、正確で迅速な対応が期待できます。
業者によってはノウハウをもとに業務効率化の提案を行ってくれる場合もあります。自社で業務を行うよりも品質が向上する点は大きなメリットです。
業務品質の高さは他社との差別化を図る重要な要素となります。企業としての競争力を高められるため、顧客満足度の改善にも効果的です。
総務代行の主なデメリットは次の5つです。
導入前より費用がかかる可能性もある
ノウハウが蓄積されにくい
突発的な業務への対応が難しい
業務状況が把握しにくい
情報流出のリスクがある
総務代行の使い方を誤れば、生産性の低下につながりかねません。利用する前に注意点を把握しておきましょう。
総務代行サービス利用料の時給単価を単純比較した場合、サービス導入前より費用がかかる可能性もあります。コスト削減のために導入したサービスが、逆に予算を圧迫させてしまっては本末転倒です。
しかし代行サービスをうまく活用すれば業務が効率化され、長期的な視点では費用対効果が高くなる可能性があります。
企業の生産性を向上させるには、総務代行の活用にともない総務担当者の業務転換を効果的に行う必要があります。時間がなくて取り組めなかった戦略的業務に挑戦させるなど、企業利益につなげる人材活用が大切です。
コスト面で不安がある場合は、依頼したい業務のうち優先順位の高いものから順に依頼し、成果を検証してから活用の幅を広げることをおすすめします。
総務代行を利用すれば自社で総務業務を行う必要がなくなるため、社内にノウハウが蓄積されにくくなります。
今後継続して総務代行を利用する予定であっても、何らかの事情で依頼を打ち切る事態の想定は必要です。内製化に戻した場合、社内にノウハウが不足していると総務業務が滞ってしまいます。
自社で一定程度のノウハウを得るためには、業務マニュアルや処理プロセスについて情報共有を行い、業者への丸投げで終わらせない姿勢が大切です。
従業員の経験と成長の機会を失わせないために、複雑な業務ではなく単純な定型業務のみの依頼にとどめる方法もあります。
基本的に、総務代行サービスは契約内容の範囲外となる業務への急な対応はできません。仮に対応の余地があっても、オンライン業務の特性上タイムラグが生じるため、迅速な対応が難しいケースもあります。
対応の柔軟性については、事前ヒアリングで業者との認識を共有しておきましょう。
代行業者によってはスタッフ常駐型のサービスを提供している場合もあります。職場におけるコミュニケーションの取りやすさを求める企業は、常駐型プランを検討してみてください。
一般的な総務代行は、あらかじめ取り決めた内容をリモートで代行してもらう仕組みが多くあります。担当スタッフとのコミュニケーションが十分でない場合、業務状況の把握が困難になるというデメリットがあります。
双方の認識が不一致のまま業務が進められると、求めていた成果が得られず品質低下につながる可能性もあるため注意が必要です。
連絡用チャットツールを使った報告ルールを定めるなど、業務状況の定期的な確認に努めましょう。
総務代行を利用する場合は自社のデータを外部に出すため、情報流出のリスクが生じます。一度信用を失えば再び顧客を獲得するのは困難なので、対策の徹底は必須です。
情報流出を防止するために、セキュリティレベルの高い業者を選びましょう。
データを適切に扱わなかった場合のリスクに関する認識をつねに共有することが大切です。
総務代行の利用にかかる料金は業務内容や難易度などによって大きく異なり、各業者で提供する料金プランもさまざまです。利用を検討する際は業者に相談し、個別に見積もりを出してもらいましょう。
一般的な料金相場は、時間単位と業務単位の2種類にわかれます。
時間単位で設定される料金プランでは、希望する稼働時間内で依頼内容を決めていきます。例えば「月30時間利用で100,000円」などと設定されるため、特定業務に限らず幅広い業務を依頼したい場合におすすめです。
時間単位の場合は必要な業務を自由に組み合わせられ、月ごとの臨機応変な組み換えにも対応できます。利用料の変動費化により、無駄なコストを削減できる点もメリットです。
ただし業者によって対応業務が異なるため、依頼したい業務の代行が可能かどうかを事前に確認しておきましょう。
業務内容 | 料金相場 | 備考 |
総務業務全般(代行業者やプランによって異なる) | 時間単価 月3,000円程度 | ・月ごとの稼働時間でプラン設定される場合が多い ・長期契約になるほど安くなる場合あり ・稼働時間の翌月繰越を認める場合あり |
業務単位で設定される料金プランは、品質の差が出にくい定型的な単純業務の依頼に適しています。依頼する業務をしぼり込むことでコストを抑えたい場合におすすめです。
代行可能な業務内容は多岐にわたりますが、以下に一例と料金相場を紹介します。
業務内容(一例) | 料金相場 | 備考 |
---|---|---|
電話受付業務 | 50コール 月10,000円程度 | ・対応時間や応答のカスタマイズにより料金変動あり |
自社に合った総務代行業者を選ぶための主なポイントは次の5つです。
自社の課題とサービス利用目的の明確化
費用対効果に見合った料金プラン
万全なセキュリティ体制
コミュニケーションの充実
業務品質の高さ
サービス内容と価格について十分に検討するほか、依頼前の準備段階でも必要な作業があります。代行サービスを効果的に活用するために、業者選びは慎重に行いましょう。
依頼業務のミスマッチや稼働開始後のトラブルを防止するためには、事前に自社の課題の洗い出しや業務整理を行い、サービス利用の目的を明確にしておくことが大切です。
依頼する業務と自社で行う業務をある程度決めた状態で業者に相談し、主に以下の項目について認識を共有してください。
自社が抱える課題や要望
業者の強みや特徴、対応可能な業務
依頼する業務範囲の検討
使用システム・ツール
自社のニーズを理解し、最適なサービスを提供してくれる業者を選びましょう。
サービス内容が自社の要望と合致しても、費用が予算に合っていなければ契約を避けるべきです。
求める品質と価格のバランスを考慮し、費用対効果の高い業者を選びましょう。
課題解決のためにかかる費用を算出し、代行サービス利用料と比較して契約の可否を判断することが重要です。費用の算出には、ツール導入などで発生する関連費用も忘れずに含めてください。
自社に合った料金プランは、業務ごとの細かい費用把握により見極めることができます。
セキュリティ上のリスク発生を防止するため、自社の機密情報を慎重に扱ってくれる業者かどうかを確認しましょう。
業者のセキュリティレベルは、主に次の点から判断します。
プライバシーマークなどの認証制度を取得しているか
スタッフへのセキュリティ教育を徹底しているか
プロジェクト管理者や現場監督などを含むチーム体制か
総務代行は一般的にオンラインを経由したサービスであるため、経験豊富な業者であればセキュリティ面にも精通しています。安心して情報を共有できる業者を選びましょう。
業者との充実したコミュニケーションは、総務代行で生じやすいデメリットの軽減に有効です。
例えば進捗状況の定期的な報告や、稼働中に生じた問題点の共有などを適切に行うことで、業務の遂行状況を把握することができます。
業務効率化につながるアイディアを積極的に提案してくれる業者と契約した場合は、社内にノウハウを蓄積することも不可能ではありません。
密なコミュニケーションを通して、長期にわたってサポートしてくれる業者を選びましょう。
総務代行を利用して業務品質の向上を図りたい場合は、スキルレベルの高さを強みに持つ業者を選ぶことが大切です。
業務品質の詳細は実際に稼働してみなければわかりませんが、業者のホームページで次の項目を掲載している場合はそれぞれ確認してみましょう。
導入実績
導入事例
スタッフの採用基準
実績豊富な業者なら、業務内容を正確に理解しスムーズに稼働を開始してくれます。また、導入事例の中に自社と同じ業種や同規模程度の企業の運用実績があれば、自社へのサービス提供にも十分なノウハウがあると判断できます。
さらに各業者で独自に設けるスタッフの採用基準から、業務品質への信頼度合いを図ることも可能です。
無料トライアルの実施などを通して、求める業務品質を満たしてくれる業者を選びましょう。
依頼したい業務が多い場合は、さまざまなバックオフィス業務の代行サービスもおすすめです。
NTT印刷の「カチアルサポート」なら、人事・秘書業務から経理業務まで幅広い総務業務に対応しています。
自社のニーズに応じて稼働時間や依頼内容の柔軟な調整が可能です。例えば月末・月初や繁忙期だけ稼働させることで、スポット的に人手不足を解消できます。
さらに、依頼内容を遂行するのは、厳しい採用過程を通過した正社員スタッフです。業務ごとに経験豊富なプロが対応するため、品質面でも安心して利用できます。
「カチアルサポート」について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。
総務代行の概要やメリット・デメリット、業者選びのポイントなどについて詳しく解説してきました。
本記事のまとめは次のとおりです。
総務代行は総務業務の安定運営や人件費削減などのメリットがあり、企業の人手不足を解消するための手段として注目されている
豊富なノウハウを持つ代行業者に依頼すれば業務品質が向上し、企業としての競争力を高められる
代行業者によって業務内容や料金プランが異なるため、ヒアリングを通して自社の要望と業者の特徴が合致しているかを確認する必要がある
総務代行は社内リソースの効率化を促進するサービスです。
外部委託の必要性の高まりや、オンライン業務の普及に合わせて今後も利用者数の拡大が見込まれます。
業務範囲が広く負担の大きい総務業務を代行してもらい、企業成長につながる戦略的業務に集中しましょう。